中国ビジネス四方山話

中国の社会信用スコア「芝麻信用」で高得点を狙うネットユーザー

山谷剛史 2015年12月15日 06時00分

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 芝麻信用という、ビッグデータから各人の信用度を数字で算出するサービスがある。芝麻信用は阿里巴巴(Alibaba)系のエスクローサービスで電子マネーの「支付宝(Alipay)」サービスの1つである。「支付宝(Alipay)」は、11月11日の1日で1兆円を超えるネットユーザーの金を動かした「天猫(Tmall)」や、「淘宝網(Taobao)」に使うエスクローサービス兼電子マネーだから、天猫や淘宝網の購入データも活用されると考えられるのは自然なことだ。阿里巴巴のサービスの使い方次第でスコアはあがり、下は350点から上は950点までの間で、その人を評価する。

 アメリカでも同様の、「FICOスコア」や「Vantageスコア」というサービスがある。これらもまたクレジットカードの支払履歴や借り入れ残高の利用実態からスコアを算出し、ローンの借り入れやクレジットカードでの利用可能額の増加などの際の参考にする。なおFICOスコアは、下は300点から上は850点までの間である。芝麻信用は、クレジットカードだけではなく、阿里巴巴系の様々なサイトの利用履歴から判断する点が、アメリカのそれとは異なる。

 点数があがると以下のようないいことがある。

  • 阿里巴巴系の旅行予約サイト「去a(aは口へんに阿)」でホテルを予約すると、ホテルでのデポジットが不要となる(600点)
  • 賃貸サイト「小猪短租」で敷金が不要となる(600点)
  • 提携するソーシャルファイナンス(P2Pファイナンス)や消費者金融で審査がすぐに通る。一部サイトでは利率が下がり、返済期限が延ばせる(600点)
  • 全国展開のレンタカーサービス「神州租車」でデポジットが不要となる(650点)
  • 上海図書館でのデポジットが不要となる(650点)
  • シンガポールビザがとりやすくなる(700点)
  • 北京空港の専用出国レーンが通れる(750点)
  • ルクセンブルクビザがとりやすくなる(750点)
  •  さらには、利用者を増やすべく、年末のスペシャルキャンペーンとして、高得点を記録した人には、神州租車のディスカウント券や、15元相当のお菓子をプレゼントする予定だ。余談になるが、9月には普及させるべく、中国全土の大学で「芝麻信用分PK活動」という、いわば「最高点をとる学生は誰だゲーム」なるものを開催し、中央銀行から「信用を遊びにしてはならない」と注意の通達があった。

     ともかく点数があがればいいことが起きるわけで、一部のインターネットユーザーが、高得点を取ろうとする動きは見られるが、その計算式は「様々な要素からはじき出している」というだけで明かされてはいない。芝麻信用について討論する掲示板では、参加者同士が自身のハイスコアを見せ合っているが、大体が600点台後半で、若干700点台の人がいて羨ましがられるというのがよくある光景だ。中国では、商品の評価もSNSのフォロワーも金で買うことが常態化しているが、まだ芝麻信用に関してはクラッキングされてなく、正常な方法で、参加者は明るい未来のために点数を積み重ねている。


     芝麻信用のアプリをみると、「身分の公開」「人との繋がり」「返済能力」「信用の歴史」「行動」の5つの要素からはじき出していることはわかる。どうやら「多くのプロフィールを嘘偽りなく登録する」「人間関係が豊富にある」「滞り無く支払いを行っている」「頻繁にネットショッピングをしている」ことが重要なようだ。人間関係を重視するのは中国らしい。

     インターネットユーザーの間では、阿里巴巴系のサービスを駆使して検証した結果、今のところは「クレジットカードを所有し、活用する」「クレジットカードの返済や光熱費の支払いが滞っていない」「頻繁に貧困対策の募金に寄付をする」「プリペイドの電話代をきらさない」「家庭を大事にすることをアピールスべく、他人の買い物を肩代わりする」「無理に買い過ぎず、(支付宝はエスクローサービスなので)商品が届いてからすぐに支払う」ことで、点数をこつこつ積み上げていくのがよいという結論になっている。寄付に関しては抵抗があるのか、0.1元単位の極めて少額のお金を何度も振り込んだり、少し多めに数十元振り込んだりして、上がった点数をチェックして報告する人も。だが、まだ法則は発見されていないようだ。

     現在、阿里巴巴の芝麻信用の外にも、騰訊(Tencent)の「騰訊征信」など、信用スコアサービスを提供する会社は数社ある。また中国政府としても、ネットユーザー全てを、あらゆるネット行動のビッグデータを分析して、各人の信用を点数化するという目標を、最新の五カ年計画で掲げている。阿里巴巴や騰訊などの各システムを融合するのか、ないしは1から新しく作るのか、いずれにしても今最も普及する「芝麻信用」に、ユーザーがどう向き合って、ユーザーに拒否感が生まれないようにするかが、今後の信用スコア普及における鍵となろう。

    山谷剛史(やまやたけし)
    フリーランスライター
    2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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