AIとロボット工学が発達するに従い、これらのテクノロジは、新たに生み出すよりも多くの仕事をなくしてしまうのではないかという、大きな疑問が浮かび上がってきた。この問題についてはさまざまな議論があり、その多くはかなり悲観的なもので、多くの人が将来人間にどれだけの仕事が残されるのか、それは人間社会に対してどんな意味を持つのかと思いを巡らせている。筆者自身はこの問題について異なる見方をしており、ロボットによって仕事がなくなれば、人間は他にもっとやるべきことを見つけるはずだと考えている。
また、2015年に注目を集めたもう1つの大きな疑問は、AIやロボットは人類を(「ターミネーター」的に)絶滅に追い込む危険な存在になり得るかということだ。フィクションは現実になるのだろうか?AIを人類絶滅の脅威として指弾する著名人の中には、Bill Gates氏、Elon Musk氏、Stephen Hawking氏なども含まれている。実際、Musk氏とHawking氏は、2015年に各国政府に対してAIを自律的な軍事システムで使用しないよう求める公開書簡に署名した100人のIT界および科学界のリーダーのリストに含まれている。
「Artificial Superintelligence: a Futuristic Approach」(「人工超知能:未来的アプローチ」の意)の著者であるRoman Yampolsky博士は、IdeaFestival 2015で、この脅威について詳しく評価した結果を発表し、AI研究を慎重かつ組織的に取り扱うことを提案した。同氏はAI研究に対して、生物兵器や化学兵器をテストする場合や、動物や子供に害を与えるのを避けようとするような場合と同じレベルの監視をするべきだと主張している。このためには、制御下に止めて置けないようなものを拙速に生み出すことがないように研究を抑制するための、研究審査委員会や予算審査が必要になる。
3.暗号に関する争いがエスカレート(Chris Duckett、豪ZDNet/TechRepublic編集者)
セキュリティやプライバシーを専門とする人たちにとって、2015年は大変な年だった。
1年前には、筆者の母国であるオーストラリアに令状なしでアクセス可能な通信のメタデータを2年間保持する制度はなかったし、著作権者がオーストラリアでウェブサイトのブロックを強制できる制度もなかった。時代は変わるものだ。
市民を監視しようとする試みの波は大きくなるばかりであり、西側諸国のリーダーは、希望的観測にすがり、テクノロジ業界に対して、政府が好きな「悪者」の通信を監視できるようにする神秘的なマスター暗号キーを差し出すことを求めようとしている。
当然ながら、この軽率な仕組みでは、マスターキーを失った場合に起こる悪影響や結末は考慮されていない。あるいは、そういった仕組みを可能にする「魔法の数学」が存在しないということも無視されている。
にもかかわらず、間違った情報を吹き込まれた政治家が、諜報機関が自由に復号できない暗号を違法化することを求める発言をしている。
テクノロジ業界の大企業がそれらの要求に対して反論し続けており、セキュリティと数学の現実を踏まえて行動していることは重要だ。