海外コメンタリー

2016年はさらに存在感を増す人工知能--研究者らに聞く7つのトレンド - (page 2)

Hope Reese (TechRepublic) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2016-01-03 06:30

5.ショッピングや顧客サービスでのAI利用

 またMoore氏は、顧客サービスやショッピングに関して、何が顧客を満足させるか、あるいは顧客に不満を持たせるかを突き止めるために、AIが利用され始めていると述べている。North Faceやその他の企業は、AIを使って顧客が最適な商品を見つけることができるよう支援している。「これは、ウェブページを閲覧している人が、自分が気に入っているファッションを示して、これよりももう少し暖かいものが欲しいと指示すると、コンピュータがそれを理解して正しい商品を提示する、というようなものだ」とMoore氏は言う。

 米TechRepublicでは、AIの世界で最大のブレークスルーのいくつかが顧客サービスで活用されている事例を紹介する記事を掲載した。Moore氏は、AIがビジネスを大きく変えつつあることに同意する。「これは、IBMが最も大きく賭けている分野だ」と同氏は言う。「90年代後半には、どの企業が世界最大のデータベースを提供する事業者になるかという競争があった。現在は、データの説明や疑問への回答、データの表現など、組み込んでビジネスに関するあらゆることができる、洗練された意思決定プロセスのためのプラットフォームを誰が提供できるかという競争が行われている」(Moore氏)

6.倫理的な課題

 話を聞いた3人の専門家全員が、今後倫理的な課題が研究の前面に出てくるという意見で一致した。Moore氏は、「私の学部でも、AIを作っているわれわれ科学技術者や計算機科学者、エンジニアが、そのような課題を検討するプログラムを作るよう、他の人たちに訴えかけなくてはならないのが現実だ」と述べた。例えば、自動運転車を作っているとして、その自動車は、道路に動物が飛び出してきたら、どのような判断をすべきだろうか。そのコードを書こうとすれば、動物の命は人間の命に比べどのくらい重いのか、という疑問が出てこざるを得ない。「1人の人間の命の価値は、10億匹の猫の命よりも重いだろうか?100万匹?1000匹?そんなコードを書くことは考えたくない」と同氏は言う。

 こういった問題の答えを導き出すための議論が必要とされている。「何に価値を置くかということについて、多くの人がまったく異なる考えを持っていることは、全員が同意するはずだ」と、Moore氏は言う。そして、さらに複雑な問題が出てくる可能性もある。「今は誰もこの問題に触れていないが、もしその自動車が歩行者にぶつかりそうになっており、その人が妊婦だったらどうだろうか?そのことは、自動車の判断に影響するのだろうか?」とMoore氏は疑問を提示する。「この種の問題は、計算機科学者やエンジニアが解くべき問題ではない。誰か別の人たちが答えを導き出す必要がある」(Moore氏)

 性行為のためのロボットに反対するキャンペーンを率いるRichardson氏は、「人間と機械の差異が崩れつつある」ことを心配している。同氏の研究は、人間にとって性行為を行うロボットがいかに有害になりうるかを示している。これは、関係性が非対称であるためだ。Richardson氏は性行為のためのロボットがすぐに実現するとは考えていないが、2016年中には、「サイバー空間で人間のように振る舞う人工的なアバターが登場し始める」と考えている。

7.人口の代表性の問題

 多くの学校が、入学する学生の多様性を高めようとしているが、「それでも性別のバランスは大きく崩れている」とMoore氏は言う。「われわれは、今後すべてのAIを特定の人口層だけで作っていくわけにはいかない。こうしたシステムは、その国の人口構成を代表している必要がある」(Moore氏)

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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