「人の気持ちが分かる機械」へ--人工知能を活用する3つの取り組み

Hope Reese (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-01-08 06:45

 人工知能(AI)の進歩とともに首をもたげてくる最大の恐れに、コンピュータが人間の感情を理解し始めるのではないかというものがある。しかし、コンピュータに人間の感情を理解させることが、われわれの必要としているものを得るための最善の道なのかもしれない。

人間の瞳をアップにした写真
提供:Arndt Vladimir氏

 ZDNetは最近の記事で、2016年にさらに存在感を増すと考えられるAI関連の7つのトレンドを採り上げた。カーネギーメロン大学計算機科学部の学部長であるAndrew Moore氏によると、AIの進化に最も重要なものの1つが、人間の感情を読み取る能力であるという。

 Moore氏は「コンピュータが人間の書き言葉や話し言葉だけでなく、コミュニケーション相手の感情をも理解できるようになれば、AIの進化に大きく役立つはずだ。そして、感情を理解する方法の実現に向けた大きなブレークスルーがいくつか起こっている」と述べている。

 以下では、AI分野をリードする大学による研究の成果から、AIと感情に関する新たな知見が、われわれの日々の生活をどのように向上させていくのかという例を3つ挙げる。

#1:子どもの教育

 カーネギーメロン大学ヒューマンコンピュータインタラクション研究所の教授であるJustine Cassell氏は、子どもがコンピュータとのやり取りを通じて学習していく過程を研究している。同氏の実験は、被験者である子どもに、本物のような受け答えをする、コンピュータシミュレーションで作られた子どもとやり取りさせるというものだ(過去の実験では、被験者の相手をする「人物」はビデオゲームのキャラクターをシミュレートしたものであった)。Moore氏によると「被験者の感情に合わせて反応する、シミュレーションで作られた子どもを相手にする場合、学習成果は大いに上がる」という結果が得られたという。

#2:うつ病の治療

 ピッツバーグ大学の教授であるJeff Cohn氏は、うつ病の治療を受けている人々の表情をコンピュータで観察、記録することで、その治療効果を検証している。被験者は週に1度来訪し、短い会話を交わすことになる。その際には、高解像度カメラを使って皮膚の動きを撮影し、顔のどの筋肉が使われているのかを常時記録するとともに、FACS(Facial Action Coding Systems:顔面の動きをコード化するシステム)を利用して、意識するしないに関係なく表情に出てくる微妙な変化と、感情を対応付けていく。

 Moore氏によると「このシステムはスマートフォンやタブレットに搭載できる段階にまで到達しているため、プライバシー上の懸念は別にしてタブレットを用意するだけで、被験者がタブレットでビデオ会議をしているのか、ゲームをしているのか、読書をしているのかにかかわらず、楽しい時を過ごしているのか、あるいは不愉快な思いをしているのかが分かるようになる」という。

#3:病気の診断

 Moore氏によると「多くの患者は自らの症状を語る際に、実際に思っていることすべてを口に出せないと感じている」という。

 この問題に取り組むために、カーネギーメロン大学計算機科学部の教授であるLouis-Philippe Morency氏は、病気の診断に役立つ情報を得るという観点から、どのようにより優れた結果を引き出せるのかについて、感情を理解するロボットと一般的なロボットを比較して見せている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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