先週、米国で開かれたあるイベントでは、Intel、NCR、SAPなどの大手IT企業や多くの専門家が、小売企業にモノのインターネット(IoT)やアナリティクスなどの技術を盛んに売り込んでいる様子が見られた。多くの小売企業は、実店舗の事業を成長著しいeコマース事業と融合させるのに苦労している。
全米小売業協会(NRF)がニューヨークで開催した年次イベントBIG Showでは、オムニチャネルが話題の中心となり、技術面でこの分野をリードするHome Depot、Macy's、Barnes & Noble、North Faceなどの企業が講演した。2015年同様、NRFのイベント会場は、次世代技術のデモンストレーションや、モノのインターネットに関する議論、オムニチャネルを実現するためのモバイルツールなどであふれていた。
2016年の小売業界の見通しは、あまり明るくない。多くの小売企業では、予想よりも暖かかったホリデーシーズンや、Amazonのeコマースの売上増加、ショッピングモールの人出の減少などにより、売上高が減っている。小売企業によるeコマースの売上高は増えており、店舗での受け取りサービス(Ship-to-Store)やモバイル利用の人気も上がっているが、これらの要因による売上高の増加は、実店舗での売上低迷を補い切れていない状況だ。eBay Enterpriseは、ホリデーシーズンのオムニチャネルによるフルフィルメント(受注から購入者に商品が届くまでの一連のプロセス)の量は72%増加し、サイバーマンデーの店舗受け取り注文は30%増加したと報告している。
NRFによれば、2015年の年末商戦の売上高は3%上昇して6261億ドルとなった。これにはオンラインの売上高も含まれており、NRFが予測していた3.7%の増加には満たなかった。
実店舗の数を減らし、デジタルメディアを利用した次の一手を模索する小売企業にとって、こうした動向があるだけに、IT企業の売り込みは機を捉えたものとなっている。以下では、IT企業や小売企業、そしてNRFが集結した今回のイベントから、特に興味深い新製品をいくつか挙げてみよう。
Intelには小売業向けの大規模な事業があり、モノのインターネット部門に組み込まれている。同社は「Retail Sensor Platform」と呼ばれる技術を発表した。このセンサプラットフォームは、小売店のシステムをアナリティクスと結びつけ、ショッピング体験の改善に利用できる営業データをリアルタイムで取得することを狙ったものだ。例えばBrooks BrothersはIntelのプラットフォームを利用して、同社のRealSenseテクノロジによるデジタルボディスキャンを行い、オーダーシャツを作っている。またサイズをスキャンするツールは、Nordstromでも使われている。AccentureやCapgeminiなどのインテグレーターも、Intelのテクノロジを採用している。
サムスンは小売店内でのタブレット、スマートサイネージ、スマートフォン、ウェアラブルデバイスのさまざまな利用シナリオを売り込んでいた。これらの商品の中でも、特に注目に値するのはスマートサイネージだ。サムスンがeyeQと協力して作った「eyeQ Video Analytics」は、サムスンのディスプレイにイメージセンサを組み込み、実際にサイネージが見られた回数と販売機会を計測する。使用されているイメージセンサは、サイネージを見た人の性別と年齢を推測する機能を持ち、注視された時間も計測できる。