Microsoftは、海中データセンターという構想を実現するための試験運用を完了した。この試験運用は、データセンター構成機材を封入した鋼鉄製ポッドを海中に沈めるというかたちで実施された。
Microsoftは、人手を介在させる必要なしに、海中で5年間の連続運用が可能なカプセル型のデータセンターというコンセプトを探求している。
データセンター構成機材を封入した直径8フィート(2.43m)の鋼鉄製ポッドを海中に沈めるという試験運用が完了した。
提供:Microsoft
Microsoftの将来にモバイルハードウェアという言葉があるかどうかは分からないが、クラウドは間違いなく存在するはずだ。同社は、自社のデータセンターを大都市に近い沿岸部の海中に設置することで、サービス提供コストを削減するという斬新な構想を明らかにした。
同社は米国時間1月31日、この構想を実現する「Project Natick」において、海中データセンターの105日に及ぶ試験運用が完了したことを明らかにした。この試験運用では、データセンター構成機材を封入した直径8フィート(2.43m)の鋼鉄製ポッドが使用された。
The New York Times(NYT)によると、このポッドはカリフォルニア州の沖合、深さ30フィート(9.14m)の場所に沈められ、Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」上で稼働する商用データ処理プロジェクトの運用にも使用されたという。
Microsoftは初の海中試験に用いるポッドに、「Xbox」向けの人気ゲーム「Halo」に登場するキャラクターである「Leona Philpott」という名前を付けていた。
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Microsoftは同プロジェクトのウェブサイトで、この構想はまだ初期段階だが、試験運用によって「世界各地の海中にデータセンターを配備することの利点と問題点に対する理解」が進むだろうと記している。
データセンターを海中に設置した場合、サーバの故障や電源異常といった事態に対処するためのメンテナンス作業が懸念となり得るのは明らかだ。しかし同ポッドは、最長5年間もメンテナンスなしで運用できるように設計されている。
どのようにしてそれが可能となっているのかについての情報は乏しいものの、同ウェブサイトのFAQページには「データセンターは5年間という配備サイクルの終了後、回収され、新しいコンピュータの封入後に再配備される」と記されている。
またFAQページの説明によると、Microsoftはムーアの法則が限界に達しつつあることで、新たなサーバ機器への交換ペースが緩やかになると見込んでいるという。
FAQページには「われわれはこれを、無人で動作する長寿命かつ復元力の高いデータセンター、つまりデータセンター内に人がいなくても、最長で10年間にも及ぶ配備期間を通じて、高い信頼性を実現するデータセンターというものに取り組む機会だと考えている」と記されている。
同社はこのプロジェクトにより、超大規模データセンターの電力供給問題や冷却問題に対する、斬新かつ低コストな解決策を模索している企業の仲間入りを果たすことになる。
例えば、Googleはスウェーデンや米国で複数のウィンドファームに投資しており、フィンランドのハミナにあるデータセンターではバルト海の海水を冷却に利用している。一方、Facebookはスウェーデンの冷涼な気候と水力発電を活用したデータセンターをルレオで運用している。
NYTの報道によると、「Microsoftは同システムで、海流発電あるいは潮力発電による電力供給の利用を検討している」という。
同報道によると、データセンターの海中運用にはリスクがあるものの、Microsoftの研究者らはデータセンターの配備に必要な期間を現在の2年から90日に短縮でき、コスト面での利点ももたらせると確信しているという。
海中データセンターを模索するもう1つの理由は、多くの都市が地価の高い沿岸部にあることだ。データセンターをこうした人口に近い海中に設置することで、レイテンシを短縮できる可能性がある。
NYTによると、Microsoftは今回よりも大型の水中システムを設計中で、2017年にはおそらくフロリダ州か北欧で試験をする予定だという。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。