IBMは1月27日、グローバル企業の経営層を対象にした調査結果を発表した。最高経営責任者(CEO)は新たなテクノロジによる変革に焦点を当て、顧客やパートナーとの関係性の再定義に取り組んでいることが示されており、これはCEOにとって新たなビジネスモデルの構築や、新たな「エコシステム(ビジネスの生態系)」形成の機会が広がっていることを意味しているという。
調査では、「先進的なCEO」と「マーケットフォロワーのCEO」に分けて、それぞれの傾向を分析している。先進的なCEOでは特に「破壊的イノベーション」に注目しており、その58%が自社に関連する破壊的イノベーションの動向に注意していると回答したのに対し、この割合はマーケットフォロワーのCEOでは44%だった。先進的なCEOは、テクノロジを活用して、新製品や新サービスを展開するだけではなく、自社を企業として「作りかえる(Reinvent)」ことを目指しており、顧客層の見直し、新たな地域市場への参入、そして新たな流通チャネルの開拓といった、外部との関係性の再構築に、きわめて積極的な姿勢を見せているという。
今後3~5年でビジネスを変革する重要テクノロジとしては、先進的なCEOの半数がAI(人工知能)領域のテクノロジであるコグニティブ・コンピューティングを挙げている。この割合はマーケットフォロワーのCEOより19%多く、今回調査した経営者全体の回答に比べても35%多い結果となった。その一方で、クラウドやIoT(モノのインターネット)については、先進的なCEOは、それらを既に採用しており、今後の重要テクノロジとしては、あまり強調していなかった。なお、マーケットフォロワーのCEOでは、それらの重要性をまさに強調しはじめたところだという。また、事業パイロットやプロトタイピングなどの実験的な取り組みについても、先進的なCEOは100%が実行していると回答したのに対し、マーケットフォロワーのCEOでは66%だった。
なお、企業を変革するための投資に対しては、先進的なCEOは回収に時間がかかると考えている。先進的なCEOの68%が、イノベーションへの投資が利益に貢献するまで3年以上待つ覚悟であると回答したのに対し、マーケットフォロワーのCEOでは57%だった。イノベーションに対して長期的投資により、それと並行して、迅速な実験やプトタイピングを活用する、こうした戦略を採用するCEOが経営する企業こそ他社に「先駆ける」ことができ、CEO自身も優れたリーダーとして認知されるようになるだろう、と調査では指摘している。
IBMによる経営層へのインタビュー調査は2003年から実施されており、今回のレポートは2015年に調査された結果に基づいたものという。