本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米IBMのVirginia Rometty 会長・社長兼CEO(最高経営責任者)と、日本オラクルの三澤智光 執行役副社長の発言を紹介する。
「IBMはコグニティブコンピューティングとクラウドを提供する会社だ」 (米IBM Virginia Rometty 会長・社長兼CEO)
米IBMのVirginia Rometty 会長・社長兼CEO
IBMのRometty CEO(最高経営責任者)が、米ラスベガスで先ごろ開催された「CES 2016」の基調講演に登壇した。冒頭の発言は、そのスピーチの中でこれからの目指すべき企業の姿を宣言したものである。
コグニティブ(認知)コンピューティングとは、人間が話す自然言語を理解し、根拠をもとに仮説を立てて評価し、コンピュータ自身が自己学習を繰り返して知見を蓄えていくことができるテクノロジを活用したコンピューティングの新しい概念である。IBMは今、それを具現化するシステムである「Watson」の普及拡大に注力している。
Watsonの事業責任者であるMike Rhodin シニアバイスプレジデントが2015年11月に来日して記者会見した際には、Watson関連のプロジェクトが世界30カ国以上で17の産業分野を対象に進行しており、400社を超えるパートナー企業とエコシステムを形成していることを明らかにした。日本では現在、ソフトバンクと共同で日本語化を進めており、間もなく日本語でのWatson活用が可能になる見通しだ。
CES2016のRometty氏の基調講演では、IBMとソフトバンクが共同で、ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」にWatsonを搭載し、世界の企業に提供する計画も発表された。Watsonを搭載したPepperにはソフトウェア開発キット(SDK)が用意されるほか、Pepperを利用する顧客の事業分野に対応した幅広いAPIにアクセスすることも可能になるという。
IBMではコグニティブコンピューティングを推進するビジネスを「コグニティブビジネス」と呼んでいる。Rometty氏は2015年11月に来日してプライベートイベントでスピーチした際、コグニティブビジネスについて次のように語っていた。
「デジタルビジネスにデジタルインテリジェンスを加えると、コグニティブビジネスになる。つまり、デジタルビジネスの先にコグニティブビジネスがある。Watsonはそのコグニティブビジネスを支えるプラットフォームになる」