震災から5年--増え続けるデータとマルチクラウドがもたらす複雑性

田中好伸 (編集部) 2016年02月24日 11時55分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 東日本大震災から5年が経とうとしている。企業ITを取り巻く環境は、この5年で大きく変化している。

 ひとつ挙げられるのが、デジタル化が大きく進んでいることだ。スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスが普及するとともに、TwitterやFacebookなどSNS、LINEなどのメッセージングサービスも当たり前のツールとなり、日常生活に欠かせないモノとなっている。

 こうした背景から経済のデジタル化が進んでおり、企業間の取引はもちろん、企業対消費者の取引もデジタル化される一方だ。このデジタル化の動きは、もはや不可逆であり、デジタル化以前の時代に引き戻すことは誰にもできない。

 経済のデジタル化が拡大することで、やはり不可逆なのが企業ITで取り扱う対象であるデータの増加だ。

 従来、企業ITで重要なのは基幹系システムだが、基幹系システムに処理、格納される構造化データは今後10年を見渡しても急激に増加することは見込めない。その一方で、ミッションクリティカルではないとされる、情報系システムの対象となる非構造化データは、確実に増加することが見込まれている。企業ITで爆発的増加していくことが見込まれるデータの実態は、画像や音声、動画、文書、メールなどだ。

 なぜ、企業ITで非構造化データが重要なのか。ビッグデータという言葉が象徴するように、個人の行動がデータとして記録されることでコンピュータの分析対象になっているためだ。

 将来を見通すと、機械学習などの技術の発展で、コンピュータがありとあらゆるデータを判別できることが期待されている。たとえばGoogleが機械学習で猫の画像を判別できるようにしたことを考えると、非構造化データの爆発的増加を止めることはやはり誰にもできない。

 さまざまなデータが業務として必要になるとしても、それに関連するコストが増えるわけではない。

 ハードディスクドライブ(HDD)の価格は安くなる一方であり、システム全体のボトルネックであるHDDという問題を解消するために普及しつつある、フラッシュメモリといったソリッドステートドライブ(SSD)も量産技術の発展で価格が安くなりつつある。この動きにつれて、ストレージも大容量化している。

 だが、ストレージ管理やバックアップに関連するコストが増えるわけではない。常に削減圧力に晒されるIT部門は、増加するデータに対して、今までよりも少ないコストでシステムの運用管理、データ保護を担うように求められている。言い方を変えると、よりコスト効率の高い運用管理が求められるという状況だ。

マルチクラウドというややこしさ

 震災からの5年間で大きく変わったのが、パブリッククラウドの普及だ。

 震災以前はパブリッククラウドへの見方は「本当に使えるのか」という懐疑的としても言い過ぎではなかったはずだ。だが、震災直後の被災状況から社内のサーバルームにシステムを置いたままでは、リスクを抱えることになってしまうという懸念からパブリッククラウドという選択肢が増えたと表現できる。

 もちろん本来のメリットであるコストの低さ、可用性、豊富な機能があるからこそ、パブリッククラウドは企業ITでの有効な選択肢となったとも言える。かつては開発環境やテスト環境として有効とされていたが、現在は本番環境としても活用できるようにもなっている。

 パブリッククラウドが当たり前になったことで見えてきたのが、さまざまなクラウドを併用するマルチクラウドという状況だ。機能ごとや業務ごとに最適なクラウドサービスを活用するようになっている。

 ここで考えておきたいのが、データをどのようにハンドリングするかということだ。

 もちろん、クラウドサービス事業者はそれぞれにデータを安全に保持する仕組みを取っており、ユーザー企業がオンプレミスでデータを保持するよりも安価にできることもある。ベンダーによっては、オンプレミスよりも安全でより高可用なこともあり得る。

 オンプレミスよりも安全な場所にデータがあるといっても、そのデータをしっかりと守る責任はユーザー企業にある。消費者や取引先企業と対峙するのはクラウドベンダーではなく、ユーザー企業だ。データをハンドリングするのはあくまでもユーザー企業だ。

 マルチクラウドでややこしいのが、データがパブリッククラウドにあることでさまざまなデータが散在することになり、一元管理しにくいということだ。

 企業ITを取り巻く背景を見てきたが、こうした状況を踏まえてZDNet Japanと姉妹メディアのTechRepublic Japanは3月2日にセミナー「東日本大震災から5年、改めて見つめなおすデータ保護~品質と速度、安全から考えるデータバックアップ戦略~」を開催する。効率的なバックアップのヒントが隠されているはずだ。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]