ソフトバンクロボティクスと米Microsoftは、クラウドロボティクス分野における戦略的提携を行うと発表。第1弾として、ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」とMicrosoft Azureを活用したリテール向けソリューション「未来の商品棚(仮称)」を2016年秋に日本で提供する。
未来の商品棚は、クラウド、ロボット、デバイスの3要素を組み合わせて、
- Pepper、Surface Hub、Windows 10デバイスで店舗をネットの世界に拡張
- Microsoft AzureのMachine Learningを活用してパーソナライズ&レコメンドを実施
- Microsoft Translatorでグローバルな接客の実現
- Microsoft Power BIを活用し見える化&自動改善
という4点を実現する。
ソフトバンクロボティクス株式会社 代表取締役社長 冨澤文秀氏(左)、日本マイクロソフト 代表執行役社長 平野拓也氏(右)
「人材確保が難しくなっているリテールの人件費を下げ、訪日外国人観光客の来店増、Eコマースの台頭といった環境変化に対応することによる売り上げ増、顧客体験の品質向上を実現するソリューションとなる」(ソフトバンクロボティクス 代表取締役社長 冨澤文孝氏)。
日本マイクロソフト 代表執行役社長 平野拓也氏は、今回の協業の背景について、「ソフトバンクとは幅広い分野で協業してきたが、ディスカッションの中で“未来の店舗を作っていくことができるのではないか?”と話が盛り上がり、Microsoft本社も含めての今回のプロジェクトとなった。これまで以上に、Microsoftのクラウドがお客様に近く感じてもらえるソリューションとなる」と語った。
Azure IoT SuiteでPOSデータを解析
「未来の商品棚」のサービス提供価格などは現在未定だが、3月8日から開催されるイベント「リテールテック」、ソフトバンクの表参道にある旗艦店で3月24日から30日まで開催する「Pepperだらけの携帯ショップ」への実証実験を経て、秋から正式サービスとして日本での提供を予定している。
店頭では、バックエンドでAzureにつながったPepperのカメラによって顧客の行動を把握し、データとして取得。来店客を顔認証によって認識し、パーソナライズされた接客を行う。Surface Hub上で店頭にない商品も含めて表示することで、リアル店舗でもEコマースを体験できる環境を作る。
平野社長がPepperの接客を体験
店頭で取得したPOSデータ、スマートフォンからのデータ、Eコマースのデータは、Azure上にあるAzure IoT Suiteで解析。その解析情報をもとに、顧客のニーズをリアルタイムに把握し、ニーズに合致した商品をSurface Hub、Surfaceなどに表示する、Pepperから提案する――といった施策も行っていく。接客はPepperではなく、タブレットやスマートフォンを使って行うことも可能だが、「実験によれば、ロボットを活用することで、利用者は感情移入がしやすいという特性がある。Pepperを活用することは大きな意味がある」(冨澤氏)という。
ソフトバンクロボティクスは、冨澤氏が「今回はリテール向けソリューションだが、介護施設、ハウスメーカーなどいろいろな業種向けでの利用が想定できる。このうちの一部はマイクロソフトとの協業で実現したい」と述べているように、今後はMicrsoft以外のパートナーとの連携も含め、業種向けソリューション拡充を進めていく方針だ。
また、今回はマイクロソフト日本法人ではなく、Microsoft本社との提携となっていることから、日本以外の海外での展開も計画されているが、「まず、今年秋に日本での展開を開始し、その後、日本以外の国での展開する」(冨澤氏)と最初に日本で事業展開し、その後、海外展開を行う。
Microsoftとしては、同社が推進している主要技術をトータルで利用できることが同提携のメリットとしており、平野氏は「当社では、プロダクティビティとビジネスプロセス、インテリジェントクラウド、Windows 10+デバイスという3つのアンビションを推進しているが、今回の協業は3つのアンビションそれぞれにとって意味あるものとなっている」と説明する。Pepperを起用する点についても「非常にユニーク」(平野氏)と評価した。