こんにちは。サイボウズでkintoneのプロダクトマネージャーをしている伊佐です。この連載では、今変わりつつある業務システム開発の現場を紹介し、次の時代にユーザー企業、SIerのあるべき姿について考えていきたいと思います。
新しいクラウドプラットフォームの登場により、企業の業務部門が使うシステムの開発に大きな変化が起きています。その変化を正しくご理解いただくために、まずはkintoneの紹介から始めます。なんせプロダクトマネージャーとして愛情を注いでいるサービスについて語るので、多少熱い思いが入る点についてはご容赦ください。
誰でもシステム開発ができるプラットフォーム
kintoneは、aPaaS(Application Platform as a Service)と言われるジャンルのクラウドサービス、いわゆる開発基盤サービスです。これまで技術者に限られていた業務システム開発を、現場のユーザーが自らの手で行えるようにした点が特徴で、現在4000社以上の企業に導入されておりますが、なんと、その契約の8割を業務部門が占めているのです。
kintoneの開発画面
2011年のリリース当初は、「ドラッグ&ドロップでクラウド上にシステムが作れる」という点が注目され、Excelに代わるツールとして利用が広がっていきました。この時期から導入いただいているTポイント・ジャパンさんや西武ライオンズさんは、Excelで行っていた営業案件管理をkintoneに移行し、クラウド上に営業ノウハウを共有する文化を築いています。
その後、他システムとのデータ連携を可能にする「REST API」機能が追加され、単一業務だけでなく部門をまたがる業務の最適化というフィールドでも使われるようになります。メガネブランド「JINS MEME」を展開するジェイアイエヌさんは、メガネの企画から製造、店舗納品までの業務プロセスをkintoneで管理しています。また、サイバーエージェントさんは、年に20社ずつ増える子会社の決算業務を効率化するために、kintoneベースで「DOX」というシステムを開発。これで年間1万時間の工数を削減しました。
このように活用の幅が広がるにつれ、ユーザーから「企業独自の業務に深く入りこんだ複雑なシステムの構築基盤にkintoneを使いたい」という声が寄せられるようになりました。それと同時に、「こんなシステムをkintoneで作りたい!」という商談がSIerに舞い込むようになり、kintoneに着目するSIerも徐々に増えてきました。
新しいSIerの台頭
kintoneを使ったシステム開発は、「要件定義がいらない」「システムの仕様変更はいつでも歓迎する」といったウォーターフォール型開発では考えられなかった方針を取ります。このことが、SI業界に新しい風を吹かせています。「わずか39万円、3回の打ち合わせでシステムを構築する」(ジョイゾー)、「納品しない受託開発、技術顧問という形で企業と契約する」(ソニックガーデン)など、kintoneをビジネスの武器として、新しい形のSIを行う企業が台頭し、注目を集めているのです。
SIビジネスを変えようとするこれらのプレーヤーはみな「kintoneなら、利用者の本当に役に立つシステムが作ることができる」といいます。一体それは何を意味しているのでしょうか。
その答えは、筆者がkintoneのプロダクトマネージャーになる以前、SI営業を担当していた頃に経験した「やりきれなさ」の中にありました。