2020年の東京五輪を前にしてインバウンドの観光客が増えている。さらにECサイトなども海外からの注文をこなすべく、さまざまな工夫を凝らしているが、手始めにサイトの多言語化をしようとした場合に直面する問題は翻訳にかかるコストと時間ではないだろうか。
専門の事業者に依頼する場合もあるだろうが、コストがウェブ制作の数倍かかることもあり、多言語化はしたいが現実的に無理と諦めているのが現状だろう。その問題をサイトに1行のスクリプトを入れるだけで解決するというサービスが「WOVN.io(ウォーブン)」だ。開発しているのは2014年に創業されたミニマル・テクノロジーズである。
サイトの多言語化を実現するミニマルの設立経緯や今後の目標を創業者で代表取締役兼最高経営責任者(CEO)の林鷹治氏、最高執行責任者(COO)の上森久之氏に話を聞いた。
ミニマル・テクノロジーズCEOの林鷹治氏(左)とCOOの上森久之氏
――サイトの翻訳を自動的に、しかも1行のスクリプトだけで実現するというのがWOVNのサービスの根幹だと思います。そもそもどうしてこれをやろうとしたのでしょうか。
林氏 エンドユーザー視点で「こういうものが欲しい」と作ったわけではありません。以前勤めていた会社で「Optimizely」というA/Bテスト向けサービスを使ったことがきっかけです。それが素晴らしいので自分でも作ってみようと思いました。色々やっているうちにA/Bテストではなく「多言語化に使えるかもしれない」と思いついたという感じです。非常にエンジニア視点で作られたサービスです。
続けているうちにVC(ベンチャーキャピタル)からの応援もあり、2014年3月に起業しました。ECサイトなどから引き合いをいただき、7月に最初の製品を出したというのが経緯です。共同創業者のJeff Sandfordも当時はシカゴに住んでいたのですが、4月に日本に引っ越してきて一緒に開発を始めました。フットワーク軽くここまで来たという感じですね。
――エンジニアが面白そうだから作ってみたという感じですね。
林氏 そうですね。もともとある技術を横展開してみてどうなるかを試してみたいというのが私自身のベースにあって、それをWOVNでやってみたという感じです。
――これまでの開発の大きなマイルストーンはどのようなものだったのですか。
林氏 2014年の1月くらいから真剣に作り始めて最初のリリースが6月なんですが、その時には静的なページの翻訳はできていて、その次に2015年の秋ぐらいに今度は動的なページの翻訳ができるようになったんです。これが大きなステップだったのかなと思います。
――それは例えばWordPressで構築されたサイトの翻訳ができるということですか。
林氏 そうですね。実際にはそれだけではなくてユーザーのコメントがつく掲示板などにも対応できるようになりました。例えば日本語である製品のレビューページにコメントが追加された時に即座にその部分が翻訳できます。例えばある商品を特別セールに設定した時には、商品の説明の部分が書き換わった段階でWOVNのウィジェットがその変更を検知して翻訳を始めるというような仕組みになっています。これは他のウェブ翻訳サービスでは難しいと思います。