日本オラクルは、ユーザー企業にハードウェアを設置するものの、運用などはオラクルが担当し、ユーザー企業はサービスを受けるという新しいスタイルのパブリッククラウドサービス「Oracle Cloud Machine」を発表。4月21日から提供している。
ユーザー企業にとっては従来のパブリッククラウド「Oracle Cloud」と同額でサービスを利用しながら、社外にデータを持ち出すことなく社内にデータを置けるようになり、メンテナンスのタイミングもユーザー企業の予定を優先できる。社外のクラウドと社内へのネットワークコストを抑え、遅延を抑えられるというメリットがある。
ユーザー企業に設定されるハードウェア。「Public Cloud Machine」と表記されている
取締役で代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の杉原博茂氏は、「全く新しいサービスであるため未知数なところはあるが、メリットが評価されることで、オラクルが目指している2020年にクラウドナンバーワンになるという目標達成のドライバーとなる可能性がある」と新サービスがクラウド事業拡大につながるとの見方を示した。
金融や公共、流通、通信などが好意的
杉原氏はCloud Machineについて、「日本のクラウドの市場規模は、2019年には2兆円市場となると試算しているが、Cloud Machineがその一角を占めることになるのではないか」と大きな期待を寄せている。「Cloud Machineは世界各国で提供されるが、メリットが日本のユーザー企業には特に受け入れられやすいところがあるのではないか」と推測している。
新サービスは、Oracle Cloudと同一構成のハードウェア、ソフトウェアを提供し、導入設定、モニタリング&サポート、管理もOracle Cloud同様にオラクル側が担当する。価格も同じ価格となっている。異なるのは、ハードウェアの置き場所がオラクルのデータセンターではなく、ユーザー企業のスペースである点だけというサービスとなる。
ユーザー企業に設置されるハードウェアは、CPUに「Xeon」を搭載したx86サーバ「Oracle Server X5」にNASストレージ「Oracle ZFS Storage」を組み合わせたもの。
価格はIaaSについては定額の月額制で、CPUコアが288、メモリが2Tバイト、ソリッドステートドライブ(SSD)が6.4Tバイト、ディスクベースのNASストレージが160Tバイト、ネットワーク接続が10ギガバイトイーサネット(GbE)が16という「Model 288」で月額259万2000円。PaaSに関しては、Integration Cloud Service、Java Cloud Service、Database Cloud Serviceともに従量制の定額で提供する。
ユーザー企業にとってメリットとなるとして以下の3点を協調した。
- セキュリティ=Oracle Cloudの強固なセキュリティ対策に加え、機密データを持ち出す必要がないのでコンプライアンス、個人情報保護、法規制などに対応しやすい
- 運用管理=クラウド事業者が変更できないとするメンテナンスのタイミングを調整可能。既存アプリケーションや機器との連携を維持。ビジネス上、高い信頼性を備えたシステムに対応
- ネットワーク=低い通信遅延を確保。ローカルネットワークに直接接続し、既存システム資産を有効活用。優れた可搬性でハイブリッドクラウドを利用できる
日本オラクル 執行役員 クラウド・テクノロジー事業統括 Fusion Middleware事業統括本部長 本多充氏
執行役員 クラウド・テクノロジー事業統括 Fusion Middleware事業統括本部長 本多充氏は「独自にサーバを立てて、データベースを作り、Javaを作りといった作業となるとハードウェアのセットアップだけで3人月かかる。今回紹介したものは数十分でセットアップ可能で、あとはアプリケーションのセッティングをすればよい。工程ごとにかかる時間、クリック数、コマンド数を削減できるため、コスト面では、独自にサーバを構築する場合に比べ、大幅にコスト減が見込める」ことを主張した。
ユーザー企業のスペースにハードを置くものの、あくまでもパブリッククラウドサービスのひとつであることから、「オンプレミスではないため、ハードウェアはカスタマイズできない。こちらが提供するもののみ」(本多氏)
こうした特徴から、日本オラクルが事前にヒアリングしたところ、社外にデータを持ち出すことに抵抗が強い金融や公共、ネットワークへの負担が少ないことからトランザクションが大きい流通や通信などのユーザー企業から好意的な意見が寄せられているという。
Cloud Machineにはコストメリットがあると説明している