ブロックチェーン

「業界の垣根を越えていく」:国内初のブロックチェーン業界団体「BCCC」設立 - (page 2)

阿久津良和

2016-04-26 17:31


インフォテリア 代表取締役社長 平野洋一郎氏

 BCCCは自団体の理念として、(1)技術を差別しない「ブロックチェーン ニュートラル」、(2)ブロックチェーン技術がさまざまなOSやクラウドで動作するため「プラットフォーム ニュートラル」、(3)過去の国が主導したプロジェクトが失敗した例を踏まえて「グローバルに連携し、ガラパゴス的活動をしない」、(4)犯罪組織などの参画を抑止するための「反社会的勢力、反市場的勢力の排除」--4つを掲げる。これらは「ブロックチェーンの健全な発展と普及を行うため」と平野氏。

 BCCCの活動領域は金融業が起点となるものの、ブロックチェーン技術の応用例は多岐にわたる。そのため流通業であればトレーサビリティ、製造業なら検査・検証データ、公共団体ならば登記や試験履歴、医療方面は治験データなどにブロックチェーンが持つデータ改ざんの抑止能力を活用していく。

 BCCCに参画する企業は、(1)ブロックチェーンの普及・啓発を図り、セミナーやイベントといった広報活動を行う「普及委員会」、(2)自社が関与するシステムやサービスにおけるブロックチェーンの適用を進め、実用事例を広く知らしめる「実用委員会」、(3)ブロックチェーンの技術的理解を深め、使いこなすアーキテクチャやエンジニアを育成する「技術委員会」、(4)協会全体の運営・方針検討を行う「運営委員会」--のいずれかの委員会に所属し、活動を行う。

 会員構成は「正会員」「特別会員」「アドバイザー」「アライアンスパートナー」「メディアパートナーなど」。

 正会員(趣旨に賛同し、趣旨に沿った活動を行う法人・個人)は売上金額に応じて異なる年会費が必要。スタートアップ企業を想定した売上1億円未満の企業は1万円、1億円以上は3万円、10億円以上は10万円、100億円以上は30万円。「スタートアップ企業の方々もブロックチェーンの成長に寄与してほしい」(平野氏)と設定理由を説明した。

 特別会員は、特定の委員会活動を推進するために委員会が招集し、理事会の承認得た会員を指す。そのほかに、本会活動に助言する有識者などのアドバイザーも参加。ブロックチェーンに関する技術的知識を有し、本会活動の対外的な普及促進を行うエバンジェリストや、互いの活動を協調する他団体アライアンスパートナー、活動に注目するメディアパートナーは年会費を必要としない。

 今後は年内100社程度の参加を見込んでいるが、「(当日11時のプレスリリース発表時点で)5社ほど申し込みを頂いた。夏には達成できるかもしれない」(平野氏)と自信を見せている。発起メンバーはブロックチェーンのイネーブラーが多いため、銀行や証券会社、他業種などのユーザー系企業、SI系企業の参画を広く求めると同時に、Global Blockchain Forumなど海外組織との連携も目指している。


テックビューロ 代表取締役社長 朝山貴生氏

カレンシーポート 代表取締役 CEO 杉井靖典氏

 BCCCのロゴデザインについては、テックビューロ 代表取締役社長 朝山貴生氏が説明した。ロゴの「BC」はブロックチェーンのパイオニアであるビットコイン(Bitcoin)に敬意を表し、関連するイメージで頻繁に使われるオレンジ色を採用。「Collaborative」は共同推進を表す青色、「Consortium」は調和を表す緑色を採用。形状を指して「ビットコインから生まれたブロックチェーン技術が、つながりと発展、そして推進していくイメージを表している」(朝山氏)。朝山氏は、国内では「ブロックチェーンに関する誤解がある」(朝山氏)と述べ、ブロックチェーンが持つ信用性や本団体に参画することでブロックチェーン技術の実用具合が分かるとアピールした。

 カレンシーポート 代表取締役 CEO 杉井靖典氏は、国内におけるブロックチェーンの取り組み状況を「現在は金融系が中心だが、国内でも多数の実証実験が行われてきた。今後は金融以外の分野へブロックチェーンの応用が広がると考えている」(杉井氏)。また、今後の展望としてブロックチェーンの基礎技術レイヤーの進化をアピール。既に国内でもブロックチェーンと連携可能な秘密分散ストレージサービスや、暗号を解かずに検索や計算を行う秘匿検索・秘匿検索技術を開発するプロジェクトが進んでいることを明かし、「国内でも切磋琢磨している状況だが、これらが外部に出回らない。もしくはブロックチェーンという文脈で語られていない」(杉井氏)とBCCCの存在意義を説明した。


日本マイクロソフト エグゼクティブプロダクトマネージャー 大谷健氏

 日本マイクロソフト エグゼクティブプロダクトマネージャー 大谷健氏は、ブロックチェーンの世界動向として、米国のR3コンソーシアムが中心であることを次のように説明する。「世界の金融がテストを重ね、そのなかからスマートコントラクトな技術をビジネスに役立てようとしている。日本マイクロソフトはAzure BaaS(BlockChain as a Service)を日本でも提供し、ブロックチェーン開発環境や実証実験に役立てたい」(大谷氏)。Azure BaaSでは、Ethereum(イーサリアム)やrippled(リップル)、IPFSといったブロックチェーンプラットフォームを容易に実行する環境を提供する。「クラウドでテストし、フェイルファーストを繰り返さないとビジネスチャンスを逃してしまう。新ビジネスやPDCAを回る環境としてクラウドが最適だ。われわれはサービスのグローバル化を、プラットフォームプレーヤーとしてサポートしたい」(大谷氏)

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