「ストレージは無限で無料」ではない--価値のないデータの保管に年間7840万円

日川佳三

2016-05-16 13:09

 「日本企業が保有するデータの85%は価値のないデータか、あるいは価値が分からないデータだ。価値のないデータを定期的に削除する仕組みを早急に構築すべきだ」

 ベリタステクノロジーズは5月13日、企業がどんなデータを保管しているのかを調べたレポート「データバーグレポート」の内容を紹介した。同社が第三者機関に委託して作成したレポートで、22カ国2250人(日本人は約100人)のIT意志決定者を対象に調べた。

 調査結果のハイライトはこうだ(図1)。日本企業が保有するデータのうち価値のある“クリーンデータ”は12%しかない。残りは、価値がないと分かっている“ROTデータ”(Redundant、Obsolete、Trivial=冗長、陳腐、無駄)が33%で、価値があるかないか分からない未分類の“ダークデータ”が52%だ。

図1:データバーグはアイスバーグ(氷山の一角)に着想を得た造語で、価値があるかどうか分からないダークデータが大量にあることを表現している。レポートでは、価値があるクリーンデータ、価値がないROTデータ、価値が分からないダークデータの3つの領域に分けて構成率を出している
図1:データバーグはアイスバーグ(氷山の一角)に着想を得た造語で、価値があるかどうか分からないダークデータが大量にあることを表現している。レポートでは、価値があるクリーンデータ、価値がないROTデータ、価値が分からないダークデータの3つの領域に分けて構成率を出している

 世界平均でも、価値がないと分かっているROTデータは33%を占めており、日本企業の平均と同じ。ここからROTデータを保管するコストを概算すると、企業全体で1Pバイトのデータを保管している平均的な中規模企業の場合、年間7840万円になるとしている。

 同社では、データバーグレポートに先立ち、顧客企業の実際のデータ構成情報を収集してまとめた「Data Genomics Index」(日本語版)を3月23日にリリース。同レポートでは、「企業のファイルサーバは、過去3年間更新されていない死蔵ファイルが全体の41%を占めている」という結果が出ていた。今回のデータバーグレポートは、同社の顧客だけでなく広く一般の企業を対象にアンケート調査によって情報を収集したものになる。

ベリタステクノロジーズ 常務執行役員 テクノロジーセールス&サービス統括本部 高井隆太氏
ベリタステクノロジーズ 常務執行役員 テクノロジーセールス&サービス統括本部 高井隆太氏

保管にはコストがかかる--ためこむ文化から脱却せよ

 「もはやデータをためこむことが文化となっている」。ベリタステクノロジーズの常務執行役員でテクノロジーセールス&サービス統括本部の高井隆太氏は、ROTデータが増えて保管コストを引き上げている理由をこう説明する。

 データをためこむ文化を作ってしまった要因として高井氏は、3つの誤った通説を挙げる(図2)。それぞれ、「ストレージは無限で無料」「データが多いほど価値が高まる」「データの価値はすべて同じ」という説だ。これらはいずれも間違っていると指摘する。

 特に、データの保管は無料だと考える社員の存在や企業のデータ保管ポリシーを守らない社員の存在が厄介だ。調査レポートによると、社員全体の65%は、私的な写真や動画、SNSコンテンツなど、企業が許可していないデータを保管している。「こうしたデータはストレージが無駄になるし、リスクにもなる」(高井氏)

図2:データをためこむ文化を形成している背景には、3つの誤った通説がある
図2:データをためこむ文化を形成している背景には、3つの誤った通説がある

 ROTデータを減らしてデータの保管コストを削減するためには、大きく2つの取り組みが必要になる。1つは、ダークデータを分析してクリーンデータとROTデータに分類すること。もう1つは、ROTデータを定期的に削除することだ。同社は以前から、これらを支援する製品やサービスを提供している。

 新サービスとして、5月13日付けでダークデータの分析と分類を支援するスポットサービス「ダークデータアセスメント」の提供を開始した。作業内容などによって無償版と有償版(個別見積もり)を用意している。このサービスの提供にあたっては、データの利用状況を可視化するツール「Data Insight」を利用する。

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