「AWS Summit Tokyo 2016」2日目の6月2日は、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏と顧客ゲストによるキーノートスピーチが行われた。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 代表取締役社長の長崎 忠雄氏。手に持っているのはAWS対応ソフトウェア/SaaSカタログの「Ecosystem Solution Pattern 2016」。5年の歳月がこれだけの厚さのカタログを生んだ
AWSの東京リージョンが開設したのは2011年3月2日。冒頭で長崎氏は、5年前の開設当時と現在を比較し、以前は「クラウドを導入しようか悩んでいる」というのがユーザーの主な声だったの対し、今は「クラウドをいかにうまく活用するか」に課題が変わったと説明。この変化を指して「(ユーザー)のテクノロジシフトが起こっている」と述べた。
新規事業でクラウドを使うのが当たり前となり、さらに今動いているアプリケーションのクラウド移行も加速している。今までできなかったことがクラウドを利用することで実現できるようになっているという。
Amazon Dash、Amazon Echoも紹介
まず長崎氏は、AWSを含むアマゾンの成長戦略について説明。Customer Experienceを向上させることで顧客が増え、それに伴い出品者も増加。これはより良い品ぞろえを生み、さらに顧客満足度が向上するというサイクルが形成される。さらに売り上げが増える事がスケールメリットを生み、さらに低コスト・低価格にすることで顧客満足度を上げているという。
amazon創業者のJeff Bezosが書いた図を元にしたアマゾンの成長モデル。AWSも同じ方法論だろう
低コスト化のカイゼン活動の一環として、以前は従業員が倉庫内の在庫棚を巡ってピックアップしていたものを膨大な自動運搬ロボットで「棚を従業員の前に移動」する取り組みを紹介した。また、日本ではまだ未提供のAmazon Dash(洗濯機の脇のボタンを押すといつもの洗剤を発注する)や、Amazon Echo(音声で検索などができるデバイス。Bluetoothスピーカーも兼ねている)を紹介した。
ここで話をAWSに戻し、現在世界で100万を超えるアクティブカスタマーを持ち、ガードナーのマジック・クアドラントでリーダーポジションを得ているのみならず、そのリストに載っている同業他社の10倍以上のリソースが実際に稼働中だと規模をアピール。ビジネス規模も前年比69%(2015Q4前年比較)増の95億ドル超にまで成長し、「(AWSスタートから)10年で売上げ1兆円を達成した」(長崎氏)と説明した。
2015年のガートナーのマジック・クアドラントでリーダーポジションは4年連続だ。そろそろ2016年版が出るはずだが、おおむね変わらないだろう
多くのスタートアップ企業が素晴らしいアイデアを具現化するためにAWSを使用して成長したと、具体的に「Dropbox」や「Pinterest」、「Airbnb」「freee」などを紹介。スタートアップのみならず、エンタープライズ企業もAWSを幅広い業界で採用しており、教育や公共機関でも使われているという。
「AWSの拡大に関してはパートナーの存在が欠かせない」と長崎氏。具体的には最上位のAPNプレミアコンサルティングパートナーが日本企業5社を含む46社あり、さらにテクノロジパートナーも充実。これらを冊子にまとめた「ESP:Ecosystem Solution Pattern 2016」は会場で配布されていたが574ページもあるかなり分厚いものだった(冒頭の写真を参照)。会場では、パートナー事例の冊子(288ページ)も配布しており、すでに多くの事例がある事を裏付けていた。
2016年には5拠点を増やしAWSは全17拠点に
次に長崎氏はAWSの今の姿を紹介。現在世界12拠点で運用しており高可用性を実現。今年はさらに5拠点増やして17拠点にするという。クラウド加速の理由としては、冒頭に挙げた「ユーザーのテクノロジシフト」に加えて、「初期費用0円かつ、過去51回にわたる継続的な値下げとサイジングからの解放」、「最先端サービスをグローバル展開できる俊敏性」などを挙げた。
また、従来優れたアイデアが社内で検討されても、時間がない、予算がない、サポートできない、既存のオンプレ資産の変更や優先順位の観点など「ITのさまざま制約」がクラウドによって解放され、企業が本来力を注ぐべき企業活動や顧客体験向上に集中できることを強調していた。