6月1~3日、都内でAmazon Web Services(AWS)の最新技術や導入事例、活用方法などを紹介するカンファレンス「AWS Summit Tokyo 2016」が開催された。登壇したアマゾンウェブサービスジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏によれば、2006年3月にAWSがクラウドサービスを開始。2011年3月に東京リージョンを開設し、ちょうど2016年は10周年&5周年になるという。
その記念すべき年に開催するAWS Summit 2016は初日のEnterprise Day & Partner Summitの来場者が1260人(抽選後)、翌日と翌々日のGeneral Conference & Developers Conferenceは1万5140人、合計1万6400人の申し込みを頂いたと長崎氏はアピールした。
アマゾンウェブサービスジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏
今回のテーマは「クラウドジャーニー(クラウドへの旅)」。「すべての組織はユニークな存在だが、クラウド導入における共通のパターン」(長崎氏)を指すキーワードを掲げたと説明した。
クラウド導入パターンとして、実験的にクラウドプロジェクトを開始し、仕事量に応じて拡大しつつクラウドファーストに至る企業がある一方で、オンプレミスからクラウドへ全面移行しつつ、最適化などを経てクラウドネイティブに生まれ変わる企業もあるという。一見するとプロセスが異なる両企業にも共通のパターンがあるそうだ。
その一例を示すゲストスピーカーとして登壇したのが、General Electric(GE)の研究開発部門であるグローバルリサーチの情報システムの最高技術責任者(CTO)を務める Eric Tucker氏だ。
Tucker氏はGEがダウ・ジョーンズ工業平均株価(Dow Jones Industrial Average)で残っている数少ない企業である理由を「自分たちを作り替えてきた」と説明した。米国で大きなチェーン店を誇るレンタルDVDのBlockbusterはNetflixなどビデオストリーミング配信企業の台頭により、カナダは全店舗閉鎖し、米国でもわずかなフランチャイズ店を残すのみ。
GE グローバルリサーチ IT CTO Eric Tucker氏
「技術の進化はメディアのあり方を変えた。これからはデジタルと未来を融合する『デジタルインダストリアル』が注目を集める」(Tucker氏)
産業のデジタル化が意味するところとしてTucker氏は風量発電のタービンを例に、電力インフラである以上継続的な提供能力が必要であるため、タービン同士が互いにコミュニケーションを取り合うといったシチュエーションを紹介しつつ、「ソフトウェアベースの機械とソリューションで産業を変革させる」と展望を説明した。
GEは2020年にまでに産業のデジタル化が起こす変革として、10億のスマートメーターが身の周りに溢れ、100億個の電球がネットワークに接続。コネクテッドカーの数は1億5200万台に増え、流通するデータは1日あたり1Pバイトにおよぶという。もちろんバックグラウンドでは人工知能(AI)や機械学習といった技術が多数活用され、あと数年で「より多くの情報を生成し続けていく」(Tucker氏)世界に突入するのだ。
他方でTucker氏はわれわれが「第3の市場の時代」にいるという。第1の市場は物々交換。第2の市場は限られた資源をコントロールするために競争する時代。だが、これらはインターネットの普及ですべてが変化し、「情報が民主化した」(Tucker氏)結果、第1次世界大戦時の英国よりもわれわれはさまざまな情報にアクセスできる。