Microsoftが「Windows 10」でさまざまなLinuxソフトウェアをサポートするために採用した方式は、20年以上前のOSをルーツとしている。
Windowsカーネルの開発責任者であるNick Judge氏によれば、MicrosoftがBashのシェルやその他の「Ubuntu Linux」のアプリケーションをWindows 10で動かすために採用したアプローチは、同社が1990年代初期に「Windows NT」で他のOSをサポートしたときの仕組みに似ている。
90年代のWindows NTには、多くの他のOSと部分的な互換性を実現するサブシステムが搭載されていた。対応していたOSには、「OS/2」や「POSIX(Portable Operating System Interface)」準拠のUnixに似たOSなどがある。同じように、Windows 10でUbuntu上で動作するBashを動かす際には、「Windows Subsystem for Linux(WSL)」が使われる。
Judge氏は、WSLのアーキテクチャを説明する動画の中で、Windows 10のLinuxサブシステムと、Windows NTのサブシステムの類似点について言及している。
「NTは、複数のOSをサポートできるプラットフォームとして作られていた。『Windowsのサブシステム』という呼び方は、ここから受け継がれている」(Judge氏)
同氏は、1990年代にNTで一部のPOSIXシステムのシステムコールをサポートしていたことが、Windowsカーネル開発チームがWSLを開発するにあたって役に立ったと述べている。
「われわれはただ、多くの古い機能の埃を払って強化しただけだ。もちろん、性能向上や正確さのために新たに修正する必要もあったが、それには時間はかからなかった」
Judge氏によれば、Windowsにサブシステムを再導入できたのは、ピコプロセスがサポートされたためだという。
「Windows 8.1」および「Windows Server 2012 R2」から追加されたピコプロセスは、Windowsでサポートされていないアプリケーションを実行する方法を提供するものだ。たとえば、これによってLinuxのバイナリをWindows 10上で実行できるようになった。ピコプロセスは仮想化技術よりも軽量だが、これは仮想マシンでOS全体を実行するのではなく、Windows OSからは隔離された、OSのうち依存している部分だけを使用した環境でアプリケーションを実行するためだ。ピコプロセスは、ピコプロセスの内部から呼び出されたシステムコールを処理する専用のドライバを持っている。WSLの場合、Bashはピコプロセスの内部で実行され、専用ドライバ(LXSSおよびLXCore)はLinuxカーネルをエミュレートし、LinuxのシステムコールをWindowsカーネルで処理可能なシステムコールに変換する。
「Windows Subsystem for Linux」のアーキテクチャ。
ピコプロセスは、Microsoft Researchが進めているDrawbridgeプロジェクトの成果だ。
「われわれはこのアプローチが、将来Windows内部のアーキテクチャを変更する際にサブシステムの考え方を再導入するため長期戦略について交わしていた社内の議論に合致することに気づいた」とJudge氏はブログ記事で述べている。
同氏は、ピコプロセスとWSLをサポートするためにWindowsカーネルに対して加えられた主な変更内容として、個々のスレッドで大文字と小文字を区別したファイル名をサポートできるようにしたことや、forkシステムコールのサポートを強化したことなどを挙げている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。