AIネットワーク化による影響とリスクについては、対応すべき項目が多岐にわたっており、報告書の最後には今後の課題として、以下の10項目をあげている。
- 研究開発の原則・指針の策定
- AIネットワーク化の進展に向けた協調の円滑化
- 競争的なエコシステムの確保
- 経済発展・イノベーションの促進に向けた課題
- AIネットワーク化の進展に伴う影響の評価指標及び豊かさや幸せに関する評価指標の設定
- 利用者の保護
- AIネットワークシステムに関するセキュリティの確保
- プライバシー及びパーソナルデータに関する制度的課題
- コンテンツに関する制度的課題
- 社会の基本ルールに関する検討
- リスクに関するシナリオの作成・共有
- 情報通信インフラの高度化の加速
- AIネットワーク・ディバイド形成の防止
- 人間のあり方に関する課題
- AIネットワークシステムに関するリテラシーの育成
- AIネットワーク化に対応した人材育成
- AIネットワーク化に対応した就労環境の整備
- セーフティネットの整備
- 地球規模課題の解決を通じた人類の幸福への貢献
- AIネットワークシステムのガバナンスの在り方
研究開発の原則や指針の策定では、OECDプライバシーガイドラインなどを参考に、関係ステークホルダーの参画を得つつ、研究開発の原則及びその説明から構成される指針(仮称 AI開発ガイドライン)を国際的に参照される枠組みとして策定に向けての検討の必要性を示している。
AI開発ガイドライン(仮称)の作成に向けては、透明性の原則、利用者支援の原則、制御可能性の原則、セキュリティ確保の原則、安全保護の原則、プライバシー保護の原則、倫理の原則、アカウンタビリティの原則の8つの原則をベースに、OECDなどにおける継続的議論の必要性を提唱していく。
その他の課題の解説については割愛するが、AIネットワーク化の進展に伴う、研究開発や、競争的なエコシステム、経済発展やイノベーションの創出、人間の権利保護、セキュリティやプライバシー、コンテンツの著作権等の制度的課題、情報通信のインフラのあり方、人材育成、ガバナンスなど、検討すべき課題は山積している。
これまで解説してきたように、日々、AIネットワーク化が急速に進化する中、新しいビジネスが生まれ、産業構造にも大きな影響をもたらすことが期待される一方で、さまざまなリスクや検討すべき課題が増えていくと予想される。
今回の検討会議での議論は大学や官僚が中心であった。今後は産業界、民間などのステークホルダーも含め、産業構造や雇用のあり方、AIネットワークと連携・協調した社会像や人間の幸せや豊かさのあり方などを、さらに踏み込んで議論や検討を進め、かつ、実行していくことが重要となっていくだろう。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。