総務省が考える、“ハイリスク・ハイリターン”なAI利用シナリオ - (page 2)

林 雅之

2016-07-01 07:00

 総務省では、AIネットワーク化による経済効果は、2045時点での年間の市場規模ベースで直接的効果だけでもプラス121兆円になると予測している。


AIネットワーク化の経済効果(出所:総務省 AIネットワーク化検討会議 中間報告書 2016.4.15)

 AIネットワーク化は、直接的効果と波及的効果も含め、これまでのテクノロジと比べ、産業構造と雇用環境に大きな影響をもたらすことになるだろう。

 雇用の影響では、AIやロボットなどによる技術的代替により、雇用が置き換えらえるという指摘もある。一方、人間ならではのクリエイティビティやマネジメント、ホスピタリティが必要であり、アイデアを生み出す仕事や、リーダ―シップなど、人同士の高度なコミュニケーション能力を必要とする分野は人間が担う必要性を指摘している。

 また、AIに代替されない能力に身に着けさせるような教育の在り方の基本的な検討や、どこまでコンピュータに任せ、何を人間にやらせるかという再編成能力の重要性を示している。

 今後の教育では、人間は、知識を習得する学習形態から、人間にしかできない感性や個性、思考力や判断力をこれまで以上に身につけていくことが重要となるだろう。

 再編成能力の観点では、特にAIネットワークとの連携や協調を念頭にいれた「分業」を考えていく必要がある。生産手段の多くをAIネットワークシステムが担うようになれば、人間が労働から解放され自由な時間を手に入れるといった一方で、雇用の代替による雇用減少のリスクも指摘されている。

 人間は、人間にしかできないコアな事業の領域に人間のリソースを集中させることで、企業の競争力向上につなげ、かつ人間自身の働きがいにもつなげていくことも問われていくだろう。

 本報告書では、AIネットワーク化のリスクについて、セキュリティや制御喪失などの機能に関するリスクと、事故や犯罪、民主主義と統治機構などの法制度や権利利益に関するリスクについて、想定し得るシナリオをリスト化しており、リスクやシナリオの共有を図り、シナリオに基づくリスク対処を進めていくことの必要性も示している。


リスク・シナリオの具体例 機能に関するリスク(出所:総務省AIネットワーク化検討会議 報告書2016 2016.20)

リスク・シナリオの具体例 機能に関するリスク 法制度・権利利益に関するリスク

 AIネットワーク化の進展は、産業構造の変革など大きなメリットがもたらされる一方で、多くのリスクが想定されている。つまり、ハイリスクでハイリターンな産業構造となり、リスクを想定した社会の枠組みづくりが求められている。

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