アナリストの評価によれば、欧州連合(EU)離脱の可決に伴い、英国企業はIT人材が不足し、ビジネスを失う事態に直面するという。
英国企業はEUからの離脱を決めた国民投票がもたらすマイナスの結果に対して備える必要があるとGartnerとForresterのアナリストは述べている。
移民法がどう変わるかはまだ不明なものの、Forresterは今後企業が一部分野の人材を確保しにくくなるという、悲観的な見通しを示している。
セキュリティやリスクを専門とするForresterグループのディレクターLaura Koetzle氏は、「デジタル分野で顧客に直接接するシステムに携わる人材は、英国から他国へ転出する」と述べている。
「移民法に関する懸念、例えば、国内に残る権利を持つのは誰かというような問題は、フットワークが軽い人材が国外での仕事を探すきっかけを作り、国外から入ってこようとする人材を尻込みさせる材料になる。また、企業の最高情報責任者(CIO)は、すでに不足している、顧客に直接接するシステムの構築を行う開発者やエンジニアの獲得にますます苦労するようになるだろう」(Koetzle氏)
Gartnerのバイスプレジデントを務めるMark Raskino氏は、マイナスの影響についてはKoetzle氏ほど踏み込んでいないが、今後2年間は、英国内で仕事を求める欧州の若者が減る可能性があると警告している。英国を拠点とする業務で人材をEU市民に頼っているCIOは、これらの可能性を念頭に置いて、「別の戦略を立案」すべきだという。
英国の半導体メーカーARMは現地時間6月24日、今回の投票結果がケンブリッジにある同社の拠点で雇用している200人の非英国人EU市民に与える影響について懸念を表明した。
またGartnerは、英国のIT企業は、経済的な先行き不安や物価上昇によって、売上が影響を受ける可能性があることを予想すべきだと述べている。同社の調査担当バイスプレジデントであるJohn-David Lovelock氏は、消費者と企業の両方のIT消費は2017年まで回復せず、企業は長期的な大型プロジェクトを延期するだろうと予想している。
Lovelock氏は、Garnerの従来の予想では2016年の英国内IT消費の成長率を1.7%としていたが、成長が鈍化することはほぼ確実だと述べている。同様に、英国のEU離脱によって、0.2%の成長が見込まれていた西欧のIT消費もマイナスに転じるという。ただし、世界的なIT消費の成長の落ち込みは比較的小幅に止まり、従来の成長予想が1.5%だったのに対し、1%以上は確保されるとしている。
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