Amazon Web Services(AWS)は、Microsoftが同社のプラットフォームで培ってきたアプローチの長所を取り入れてきており、企業はそのメリットを享受している。
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どのクラウドが最も安価であるかという無意味な論争や、果てしなき価格競争が長年続いてきているものの、クラウドインフラの価格は底を打ったように見える。RedMonkの金融アナリストRachel Stephens氏によると「長らく続いてきた価格下落に向けた圧力が弱まってきているようだ」という。
素晴らしい話だが、実際には価格の安さがクラウドの決め手となっていたわけではなく、AWSが優勢である理由も「一貫した低価格戦略」のみにあったわけではない。AWSは業界最低水準の価格を実現していたが、それなりの利幅も確保できることを証明している。Amazonの2016会計年度第2四半期決算において、AWSの営業利益はAmazon全体の56%を占めていた。
AWSが市場をリードしている理由は価格にあるのではなく、RedMonkのアナリストStephen O'Grady氏が指摘しているように、競合するMicrosoftの戦略を取り入れてきたことにある。AWSはプラットフォームであり、価格ではなくプラットフォームこそが顧客を引き留めておく秘訣なのだ。
価格競争の結果ではなかった
AWSは確かに、価格の引き下げに積極的に取り組み、2006年から50回以上もの値下げを実施している。同社は競合他社に先駆けて価格を引き下げる傾向にあり、規模の優位性を生かして薄利多売で利益を上げるとともに、他社が競合しようとしても利益を出しづらい状況を生み出している。
とは言うものの、価格面での優位性で顧客に訴求しようとしてきたのはAWSではなくGoogleだ。Stephens氏もこの点に目を向け、メモリ面かコンピューティング面かにかかわらず、「Googleは最も積極的に価格競争に挑んでいる」と主張している。こうした主張は、クラウド市場をウォッチしている人々にとって目新しいものではないはずだ。Googleのクラウド責任者であるMiles Ward氏は1年前、Googleのクラウド価格は「常に」AWSよりも安くなっていると筆者に語っていた。
しかしこの戦略は功を奏していない。少なくとも大きな成功を収めているとは言えない。
その理由は、企業の購買者は予算を少しでも節約できるクラウドを探しているわけではないというところにある。そうではなく、パブリッククラウドはビジネスのアジリティを向上させるのが目標のすべてであるため、スタックあるいはプラットフォームの完全なエクスペリエンスを提供できるベンダーを選択することが第一義となる。