国際銀行間通信協会(SWIFT)の金融メッセージングシステムを使用して決済情報をやりとりしている各銀行は、サイバー犯罪者による攻撃に備えてセキュリティを強化する必要に迫られている。
Reutersが入手した同協会から顧客への通知によれば、盗まれたSWIFTコードが悪用されバングラデシュ中央銀行から8000万ドルを奪われた事件から数カ月間が経過したが、金融業界の一部の組織では、依然としてセキュリティにかなりの問題が残っていると見られる。
この通知で、新たなセキュリティ対策が導入されているにも関わらず、銀行から資金を奪おうとする新たな試みが続いており、少なくとも部分的には、一部のサイバー攻撃が成功していたことが明らかになった。
Reutersが入手した通知には、「顧客の環境が侵害され、その後不正な送金指示の送信が試みられた」とあり、「脅威は継続的で順応性が高く、洗練されており、今後もなくならないと見られる」という。
SWIFTの通知はこれらの新たな攻撃の結果、一部の銀行で資金が盗まれたことを示唆しているが、影響を受けた組織の名前や、盗まれた資金の金額、最近の攻撃が成功した回数については明らかにされていない。ただし同協会は、不正な送金指示の送信を目的としてSWIFTへのアクセスを得るために、さまざまな手法が使われていると述べている。
この通知で分かるのは、新たな被害組織は規模も所在地もさまざまである一方で、1つの共通点を持っていることだ。すべての被害組織には、組織内のセキュリティに問題があり、サイバー犯罪者はそこを突いて組織のネットワークに侵入し、資金移動を指示する不正なメッセージを送信している。
2月に発生したバングラデシュ中央銀行の場合も、当時はファイアウォールは存在せず、中古の安価なネットワーク機器を使用してSWIFTに接続していた状態で、セキュリティはほとんどないに等しかった点を突かれて銀行のシステムに侵入され、資金を奪われた。
処理待ちの状態だった不正な決済要求が途中で阻止されたのは、決済要求の1つに綴りの間違いがあるのに気づかれたために過ぎない。それがなければ、被害金額は8000万ドルではなく数千億ドルに膨らんでいたはずだ。この事件の責任を取り、バングラデシュ中央銀行総裁が辞任している。
SWIFTは、銀行が用いているSWIFTのセキュリティ対策が、システムを利用するのに十分な水準に達しているかを監査役や規制当局が評価するための、より厳しいガイドラインを配布している。
また、SWIFTは各銀行に対して、11月に設定された期日までに、既知の攻撃手法を防ぐ機能が組み込まれた、同組織が提供するソフトウェアの最新バージョンをインストールしなかった場合、規制当局に報告する可能性があると警告している。
SWIFTの広報担当者は、「全ユーザーに対する通知の中で、SWIFTは顧客に対して、Customer Security Programmeによって達成された具体的な結果について知らせ、顧客に対して適切な対策を取ることを強く求めるとともに、顧客企業に対して継続中の攻撃について警告した」と述べている。
「この通知は、SWIFTの顧客に対して、協会はSWIFTネットワークおよび中核的なメッセージングサービスが侵害されたことを示唆する情報を持っていないことを保証し、Customer Security Programmeの進捗状況について詳しく説明するものだ」(SWIFT)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。