すべてのクラウドでシームレスに分析できる環境を
今回の基調講演で、もっとも時間を割いてデジタル化の必要性を説いたのが、Ratzesberger氏である。
デジタル化の必要性を説いたRatzesberger氏
同氏がデジタル化による企業文化変革の象徴として挙げるのが独Siemensだ。同社はスペインの鉄道会社Renfeとパフォーマンス保証契約を締結している。同契約は、Siemensがリモート監視によるデータ分析で、故障予兆と適切なメンテナンス時期を把握し、事前に対策を講じるというもの。その結果、マドリードとバルセロナ間を結ぶ高速列車において、99.9%以上の定時運行率を達成したという。
これを受けRenfeは、同区間で到着が15分以上遅延した場合に、すべての乗客に対し乗車券の払い戻しを行うサービスを開始した。同サービスにより、これまで同区間で飛行機を利用していた乗客の60%が、鉄道に乗り替えたという。
Ratzesberger氏は、「デジタル化は企業文化に変革をもたらす。企業にとって技術変革は楽なことだが、企業文化の変革に対応することは難しい。しかし、(デジタル化がもたらす変革に)対応できなければ、生き残れない」と強調する。こうした課題に対しTeradataでは、「ビジネス・ソリューション」「アーキテクチャ・エキスパート」「テクノロジー・ソリューション」の3分野において、顧客を支援していくと強調した。

収集したデータを分析によって「情報(インテリジェンス)」に昇華させ、さらに「洞察(インサイト)」を加えることで唯一無二のデジタル資産にする。しかし、そこには大きな課題があると、Ratzesberger氏は指摘する。それがデータのサイロ化だ。実際、異なる部署で同時に同じ分析をした場合に、導き出された結果が違うというケースも少なくない。
こうしたビジネス課題を解決するコンセプトとしてTeradataは、「TERADATA Everywhere」を発表した。これは、オンプレミス、マネージドクラウド、プライベートクラウド、パブリッククラウドといったすべてのプラットフォーム上で、Teradataの超並列処理(Massively Parallel Processing:MPP)型アナリティクスデータベースを利用できるようになるものだ。
2016年4月に発表したTeradata IntelliFlex。2016年第4四半期リリース予定の機種ではメモリおよびコンピュータノードが2倍となる予定だ。さらにオプションでオールフラッシュモデルも登場するとのことだ
オンプレミスの環境では、4月に発表したTeradata IntelliFlexに対応する。パブリッククラウドでは、AWSとAzureに対応するが、「顧客ニーズを見ながら対応クラウドを追加していく。技術的には難しい作業ではない」(Ratzesberger氏)という。なお、プライベートクラウドではVMwareに対応する。基調講演ではこれら4つの環境でTeradata Databaseが稼働する様子が紹介された。
オンプレミス、マネージドクラウド、プライベートクラウド、パブリッククラウド上でTeradata Databaseが稼働するデモ
また、ビジネス・ソリューションを具現化したもう1つのコンセプトとして発表されたのが、「Borderless Analytics」である。これは、「TERADATA Everywhere」上で稼働するもので、複数の分析エンジンに格納されたデータソースをシームレスに統合する「Teradata QueryGrid」と、Teradataのシステムを連携する「Teradata Unity」から構成される。「Borderless Analytics」により企業は、オンプレミスからパブリッククラウドまで、プラットフォームを横断した分析が可能になる。
基調講演後、メディアの個別取材に応じたRatzesberger氏は、「Borderless Analyticsは“どこに格納されているデータかを意識することなく分析したい”との顧客要望から生まれたものだ」とコメントし、顧客の課題解決に注力する姿勢を改めて強調した。