「オンプレミスからクラウドへのシステム移行を成功させる秘訣は、アプリケーションを改修せずに、いまあるシステムをそのまま仮想化してクラウドに持っていくというもの。オンプレミスのロードバランサがF5 BIG-IPなら、クラウド上でもF5 BIG-IPの仮想アプライアンスを使うことで、オンプレミスと同等の機能と運用管理性が得られる」
F5ネットワークスジャパンでビジネスディベロップメントマネージャを務める帆士敏博氏
F5ネットワークスジャパンでビジネスディベロップメントマネージャーを務める帆士敏博氏は9月16日、ユーザー企業が情報システムをクラウドに移行する際のポイントを、このように解説した。1つの事実として、同社の顧客のほとんどは、アプリケーションを改修せずにクラウドに移行しており、クラウド上でもF5 BIG-IPを使っているという。
同社の顧客20社に聞き取り調査して分かったクラウドの利用状況について帆士氏は、「IaaS型パブリッククラウドを企業情報システム用途で利用する使い方は、国内ではまだ“夜明け前”の段階にある。今後1年ほどで急速に利用が進む」と見る。
「どのIaaSを使うか」の問いに対する20社の回答は、AWSのみが半数(10社)を占めた。次に、Azureのみが20%(4社)、複数クラウドが20%(4社)、使わないと答えたユーザーが10%(2社)だった。AWSとAzureが強く、特にAWSの人気が高いことがうかがえる。
「クラウドでも運用を変えたくない」という需要にこたえる
オンプレミスでF5製品を使ってるユーザーのほとんどは、システムをクラウドに移行しても継続してF5製品を使うという。理由の1つは機能にある。「クラウドが標準で提供しているシンプルなロードバランサではできない処理をやっているユーザーが多い」(帆士氏)。必要なログを得られることもF5製品の利点だ。
システムを改修せずにそのままクラウドに持っていけば、オンプレミスと同じ機能を、同じ運用のまま使い続けられる。ロードバランサも、仮想アプライアンス版をそのまま利用できる
アルバイト情報サイトを運営しているユーザーは、ウェブブラウザのUserAgent情報を利用して、F5 BIG-IPでスマホ用サイトとPC用サイトにアクセスを振り分けている。スマホ用サイトが主体で、サーバーや開発体制が独立しているためだ。この振り分け機能をそのまま使いたかったので、クラウド上でもF5 BIG-IPを導入した。
運用面でも、「これまでと同じ運用ができることが大切」(帆士氏)だ。帆士氏が直近で会った金融系のユーザーは、AWS標準のロードバランサであるELB(Elastic Load Balancing)でも事足りるケースにも関わらず、オンプレミスと同様にAWS上でもF5 BIG-IPを導入した。「ロードバランサの死活監視の設定を変えたくない」という運用監視者の都合だった。