ここで不透明なのは、企業データを保管するアプリケーションを実際に持つことに利点があるかどうかだ。Oracleのデータベースに接続された同社のインテリジェントなアプリや、SAPのHANAを用いたERPデータを考えてみてほしい。最適なアプローチとはおそらく、AIや機械学習を用いて複数のシステムを活用するというものだろう。あらゆるITベンダーは(自らの)単一スタックを勧めてくるだろうが、この世界はさまざまなシステムで構成されているのだ。SalesforceのEinsteinはあらゆるデータを対象にできるわけではない。またOracleのインテリジェンスは、SAPのシステム上では十分に活用できないかもしれない。
IBMのWatson部門は、The Weather CompanyのB2B部門などの買収によってデータを集積するとともに、さまざまなところからもデータを収集しようと注力している。筆者は先週、IBMのWatson IoT事業部でコマース&教育担当ゼネラルマネージャーを務めるHarriet Green氏と話す機会があった。
同氏はIBMとWatson IoT事業部がエコシステムを構築するとともに、構造化の有無にかかわらずデータから有益な情報を導き出す方法をWatsonに学習させようとしていると述べた。Green氏は「われわれは大量のデータを生成しているが、それを自然言語で迅速に推論し、関連付ける能力を持ち合わせていない」と述べるとともに、「Watsonは根本的な問題を解決しようとしている」と述べた。
英国のロンドンに拠点を置き、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)を手がけるBlue Prismは小規模企業ながら、その構想はSalesforceやOracleといった企業がいつかは手がけること、すなわち作業の自動化を見据えたものとなっている。Blue PrismはIBMとパートナー関係を結んでおり、今後も目を離せない企業だ。
Blue Prismの最高経営責任者(CEO)であるAlastair Bathgate氏はニューヨークでのインタビューで、「RPAはすでに実現しており、グレーカラーの仕事を肩代わりするようになってきている」と説明するとともに、「レガシーシステムが2000もあれば、誰も時間をかけてそういったシステムをどうにかしようとは思わないだろう。RPAは画面上には現れてこず、人間が行ってきた作業を模倣するものとなる」と語った。
Bathgate氏は、ロボットが人間の労働力に取って代わることはないが、時とともに手を貸せるようにはなるだろうと述べ、「人間からAIというのは正しい方向ではない。最初にデジタル従業員が必要だ。現時点でRPAは、企業におけるAIの最も適切な応用と言える」と語った。
まとめると以下のようになる。ビジネス市場を狙うIT企業の多くはAIをキーワードにしてマーケティングを展開している。こういったマーケティングに対する企業の最善策は、一歩下がって全体像を見極め、自動化とAI、会社のシステムをどのように調和させていくのかという概要をまとめることだ。さもなければAIというキーワードに飲まれてしまうかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。