「ERP/CRM単独ソフトの時代は終わった」、Dynamics 365がまもなくGAへ

取材・文:阿久津良和 構成:羽野三千世

2016-10-03 16:36

 日本マイクロソフトは9月29日、7月に発表した「Microsoft Dynamics 365」「Microsoft AppSource」に関するプレスラウンドテーブルを開催し、今後の戦略などを説明した。

 Microsoftはこれまでに、ERP/CRM分野ではCRMパッケージ「Microsoft Dynamics CRM」、ERPパッケージ「Microsoft Dynamics NAV」、エンタープライズ向けERPパッケージ「Microsoft Dynamics AX」といった製品をリリースしている。

 今回来日したMicrosoft CVP Dynamics Sales & PartnersのFrank Holland氏は、「個別のパッケージで情報を管理する時代は終わった。(自社製品を含む)単独のパッケージは死んだ」(Holland氏)と述べ、これまで単独で提供してきたERP/CRMパッケージ製品を「Dynamics 365」として統合し、クラウドサービスとして提供していくと説明した。


Microsoft CVP Dynamics Sales & Partners Frank Holland氏

 具体的には、下図に示したとおり、Microsoft Azureを基盤にPowerAppsやPower BI Embeddedなどで構成されたアプリケーションプラットフォームが稼働し、その上にOffice 365やDynamics 365、パートナー企業のビジネスアプリケーションが載る形となる。


Office 365と同じように「Microsoft Dynamics 365」もクラウドソリューションに生まれ変わる

 このような構造に変化した理由としてHolland氏は次のように説明した。「(旧来のERP/CRMのように)部分的に展開しても、顧客の利益につながらない。バックエンドだけではなくフロントエンドもデジタル化し、全体像を見据える必要がある。そこでサイロ型(縦割り型)ではなく、すべてをつなげるクラウドソリューションの形にした」(Holland氏)

 同様のソリューションは競合他社もリリースしているが、Dynamics 365が持つ強みとして、Holland氏は、「現状のビジネスに合わせた業務アプリケーションからスタートし、自社のビジネス規模に合わせて拡張できる」、「ビジネスプロセスの最適化による生産性の向上とOffice 365による生産性の支援」、そして「企業の成長規模に合わせた柔軟性や拡張性を備えている」といった点をアピール。その上で、Dynamics 365の活用事例を1つ提示した。

 Holland氏が挙げた事例は次のようなもの。とある投資家は日本のショッピングセンターで多く購入されているものが、日常品なのか高額商品なのかをPOSデータから収集して、日本の経済状況を読み取りたいという希望を持っていたが、これらのデータを分析してレポート化するには時間がかかる。ここでDynamics 365を利用すれば、同じAzure基板上の分析サービスとPOSデータを連携させて洞察データを作成できる。そして洞察データを投資マネージャに提供すれば起こすべきアクションは自然に分かる。

 Dynamics 365と同時に登場した「Microsoft AppSource」は、パートナーソリューションをカタログ化し、プラットフォームとして提供するマーケットプレースだ。Microsoft Asia VPのSimon Davies氏は、「例えば銀行は『業種』から『金融サービス』を選択することで、自行のビジネスに当てはまるアプリケーションを見つけることができる」と説明した。現時点で日本のISVや開発パートナーはAppSourceに登録していないが、日本マイクロソフトでは国内パートナー向けに説明会を開催しており、今後登録が増えていくと予想される。


Microsoft Asia VP Simon Davies氏

 WindowsやOfficeと異なりMicrosoft Dynamicsシリーズは日本市場で劣勢を強いられているが、Davies氏は「日本ではMicrosoftがDynamicsから撤退という噂があるが、それは絶対にあり得ない。まったく逆だ」と、より強く日本市場にコミットしていく姿勢を示した。Dynamics 365はグローバルで2週間以内に一般提供(GA)を迎え、各国で順次ローンチが始まる。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    Pマーク改訂で何が変わり、何をすればいいのか?まずは改訂の概要と企業に求められる対応を理解しよう

  2. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  3. セキュリティ

    クラウド資産を守るための最新の施策、クラウドストライクが提示するチェックリスト

  4. セキュリティ

    最も警戒すべきセキュリティ脅威「ランサムウェア」対策として知っておくべきこと

  5. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]