日本マイクロソフトは9月29日、7月に発表した「Microsoft Dynamics 365」「Microsoft AppSource」に関するプレスラウンドテーブルを開催し、今後の戦略などを説明した。
Microsoftはこれまでに、ERP/CRM分野ではCRMパッケージ「Microsoft Dynamics CRM」、ERPパッケージ「Microsoft Dynamics NAV」、エンタープライズ向けERPパッケージ「Microsoft Dynamics AX」といった製品をリリースしている。
今回来日したMicrosoft CVP Dynamics Sales & PartnersのFrank Holland氏は、「個別のパッケージで情報を管理する時代は終わった。(自社製品を含む)単独のパッケージは死んだ」(Holland氏)と述べ、これまで単独で提供してきたERP/CRMパッケージ製品を「Dynamics 365」として統合し、クラウドサービスとして提供していくと説明した。
Microsoft CVP Dynamics Sales & Partners Frank Holland氏
具体的には、下図に示したとおり、Microsoft Azureを基盤にPowerAppsやPower BI Embeddedなどで構成されたアプリケーションプラットフォームが稼働し、その上にOffice 365やDynamics 365、パートナー企業のビジネスアプリケーションが載る形となる。
Office 365と同じように「Microsoft Dynamics 365」もクラウドソリューションに生まれ変わる
このような構造に変化した理由としてHolland氏は次のように説明した。「(旧来のERP/CRMのように)部分的に展開しても、顧客の利益につながらない。バックエンドだけではなくフロントエンドもデジタル化し、全体像を見据える必要がある。そこでサイロ型(縦割り型)ではなく、すべてをつなげるクラウドソリューションの形にした」(Holland氏)
同様のソリューションは競合他社もリリースしているが、Dynamics 365が持つ強みとして、Holland氏は、「現状のビジネスに合わせた業務アプリケーションからスタートし、自社のビジネス規模に合わせて拡張できる」、「ビジネスプロセスの最適化による生産性の向上とOffice 365による生産性の支援」、そして「企業の成長規模に合わせた柔軟性や拡張性を備えている」といった点をアピール。その上で、Dynamics 365の活用事例を1つ提示した。
Holland氏が挙げた事例は次のようなもの。とある投資家は日本のショッピングセンターで多く購入されているものが、日常品なのか高額商品なのかをPOSデータから収集して、日本の経済状況を読み取りたいという希望を持っていたが、これらのデータを分析してレポート化するには時間がかかる。ここでDynamics 365を利用すれば、同じAzure基板上の分析サービスとPOSデータを連携させて洞察データを作成できる。そして洞察データを投資マネージャに提供すれば起こすべきアクションは自然に分かる。
Dynamics 365と同時に登場した「Microsoft AppSource」は、パートナーソリューションをカタログ化し、プラットフォームとして提供するマーケットプレースだ。Microsoft Asia VPのSimon Davies氏は、「例えば銀行は『業種』から『金融サービス』を選択することで、自行のビジネスに当てはまるアプリケーションを見つけることができる」と説明した。現時点で日本のISVや開発パートナーはAppSourceに登録していないが、日本マイクロソフトでは国内パートナー向けに説明会を開催しており、今後登録が増えていくと予想される。
Microsoft Asia VP Simon Davies氏
WindowsやOfficeと異なりMicrosoft Dynamicsシリーズは日本市場で劣勢を強いられているが、Davies氏は「日本ではMicrosoftがDynamicsから撤退という噂があるが、それは絶対にあり得ない。まったく逆だ」と、より強く日本市場にコミットしていく姿勢を示した。Dynamics 365はグローバルで2週間以内に一般提供(GA)を迎え、各国で順次ローンチが始まる。