日立製作所は10月18日、「クラウド型設計業務支援サービス」を10月19日からグローバルに事業展開する製造業向けに販売開始すると発表した。同サービスは、工業製品の設計業務に関連するさまざまなデータをクラウド上に集約し一元管理できる「設計業務ナビゲーター」と、設計データの処理に求められる高性能なクライアント環境を仮想デスクトップ上で利用できる「3D-VDIサービス」を、クラウドサービスとして提供するもの。
国内外の複数の拠点や社外のサプライヤーと安全かつ迅速にデータを共有することが可能となり、設計プロセス、品質の統一および向上、システム構築・運用・保守コストの削減など設計業務の効率向上を実現するという。費用は個別見積もり、提供開始時期は設計業務ナビゲーターが2017年2月、3D-VDIサービスが同3月。
クラウド型設計業務支援サービス概念図
同サービスで提供する設計業務ナビゲーターは、製品仕様書や図面、プロジェクト進捗といった設計業務に関連するデータをクラウド上に集約・一元管理し、画面上で表示できるもの。また3D-VDIサービスでは、3次元CADやCAEなど、高い性能が求められるツールを快適に利用できる仮想デスクトップ環境を提供する。
これらにより、拠点が地理的に分散していてもデータを迅速に共有し、設計プロセスを共通化することができるため、情報共有の問題に起因する作業の手戻りや設計不良を防止し、製品の品質を統一し、向上を図れる。
また、同サービスはクラウドサービスとして提供するため、従来、設計管理ツールや3次元CAD、CAEを利用するために必要だったシステムの構築や運用・保守に関わるコストを低減するほか、機密性の高い管理が求められる設計データの外部への漏えいリスクを低減し、セキュリティの強化を実現する。
同サービスは、日立グループの複数の部門で先行的に利用が進められており、例えば昇降機事業を手掛ける株式会社日立ビルシステムでは、エレベーターのリニューアル工事に伴う壁面などの構造物に関する3次元データの共有にかかる時間を、約50%短縮したとのこと。
主な特徴は以下の通り。
- 設計業務ナビゲーター
- 3D-VDIサービス
製品仕様書や図面、設計プロセスやプロジェクト進捗などのデータをクラウド上に集約・一元管理するとともに、画面上に表示することが可能。これにより、迅速なデータ共有が可能となるほか、設計プロジェクトの関係者全員が同じ設計プロセスに基づいて業務を進め、作業の手戻りや設計不良を防止することができる。また、熟練設計者の知識や技術をメモとして残すことができるため、国内拠点から設計業務を移管された海外の若手設計者や新入社員への技能伝承にも活用可能。
GPUのソフトウェア仮想化技術を活用した仮想デスクトップ環境により、3次元CADやCAEなどの設計ツールをクラウド経由で利用することが可能。これにより、海外出張などの際にも別の拠点からいつでも高性能な設計システムを利用できるほか、設計業務ナビゲーター上のデータも迅速に利用できる。また、従来は拠点ごとに必要だった高性能なクライアント環境の構築・運用・保守コストを低減できるほか、利用者による情報アクセスの可否をクラウド上で集中制御することで設計データの外部への持ち出しを困難にし、情報漏えいのリスクを低減する。
TSCMソリューションにおける本サービスの位置付けとIoTプラットフォームLumadaとの関係
なお日立では、製造業のバリューチェーンの全体最適化を支援するサービス群を「Hitachi Total Supply Chain Management Solution」(TSCMソリューション)として体系化している。同社は、本サービスをTSCMソリューションの1つとして、自動車や電気機械などグローバルに事業展開する製造業向けに販売するとともに、今後はIoTプラットフォーム「Lumada」も活用してサービス強化を継続的に推進し、製造業の経営の効率化に貢献していくとのこと。