Netcraftが発表した2016年10月のウェブサーバ調査によると、アクティブなサイトに絞り込んだ場合、「NGINX」が、ウェブサーバ市場シェアで現在2位につけている。NGINXが「Microsoft Internet Information Server」(IIS)を追い越したのはかなり昔で(もっとも、サイトの全体数を対象とした場合、MicrosoftのシェアはNGINXを超えている)、最近では徐々に長年の首位の座を守っている「Apache」に迫りつつある。しかし、NGINXの最高経営責任者(CEO)Gus Robertson氏は、インタビューの中で、ApacheとNGINXの狙っている市場は異なっていると述べている。
NetcraftのOctober 2016 Web Server Surveyより。アクティブなサイトに絞り込んだ場合の推移。
「わたしはApacheは素晴らしいウェブサーバだと思っている。NGINXはApacheとは異なる利用事例を想定している」と同氏は述べている。「Apacheがライバルだとは思っていない。われわれの顧客は、NGINXをロードバランサや、マイクロサービスの構築に使っているが、どちらもApacheに向いた用途ではない」
実際、Robertson氏は多くの顧客がNGINXとApacheの両方を使っていることに気づいたという。「顧客はApacheの手前で、負荷分散やアプリケーションにNGINXを使用している。NGINXのアーキテクチャはかなり異なっており、並行的にウェブサービスを提供するのに向いている」と同氏は言う。また、クラウド構成ではNGINXが有利だと述べている。
さらにRobertson氏は、「NGINXは依然として利用者が増えている唯一のウェブサーバだ。他のウェブサーバはすべてシェアが縮小している」と話をまとめている。
しかし、これは必ずしも正しくない。Netcraftが発表した2016年10月のウェブサーバ調査のアクティブなサイトの推移をみると、この月にアクティブなサイトがもっとも増加したのはApacheで、180万サイト増加しているのに対し、NGINXの増加は60万サイトで2番目だ。
一方でMicrosoftのIISは120万サイト減少して、アクティブなサイトのシェアは9.27%となり、初めて10%を割り込んだ。Apacheはアクティブサイトの市場シェアを0.19%伸ばして、シェア46.30%で首位を守っている。ただし、Apacheのシェアがこの数年徐々に縮小している一方、NGINXのシェアが19%近くまで拡大しているのは事実だ。
NGINXは、オープンコアモデルの商用ウェブサーバである「NGINX Plus」の改善を続け、競争力を高めようとしている。最新版の「NGINX Plus Release 11」(R11)では、拡張とカスタマイズの両方が容易になっており、サポートされている導入環境の幅も広がった。
最大の特徴は、ダイナミックモジュールのバイナリ互換性が追加されたことだ。これは、オープンソース版のNGINX用にコンパイルされたダイナミックモジュールを、NGINX Plusでも読み込めるようになったことを意味している。
NGINX Plusの拡張と機能追加に、NGINX用のサードパーティモジュールを利用できるため、オープンソースのモジュールや商用モジュールを幅広く使えるようになる。これによって開発者は、サポートが得られるNGINX Plusのコアをベースにして、カスタム拡張機能やアドオン、新製品を作ることが可能になる。
NGINX Plus R11の改善点には、他に以下のようなものがある。
- TCP/UDPロードバランシング機能の改善:SSLサーバの名前によるルーティング、新しいロギング機能、変数の追加、Proxy Protocolのサポート状況の改善。これらの新機能によって、デバッグ機能が強化され、幅広いエンタープライズアプリケーションをサポートすることが可能になる。
- IPアドレスによる地理位置情報取得機能の改善:サードパーティーの「GeoIP2」モジュールが、正式に認定され、NGINX Plusユーザーに提供されるようになった。この新バージョンでは、「GeoIP」で使用していたデータベースよりも、ローカライズされた、より詳しい位置情報が利用できる。
- 強化されたnginScriptモジュール:nginScriptは、JavaScriptをベースとした、NGINX Plus用の次世代設定言語だ。今回のリリースでは、Stream(TCP/IP)モジュールで、リクエストとレスポンスのデータを処理中に修正できる新機能が導入された。
結論としては、NGINXは当面、ウェブサーバ市場でApacheとの一騎討ちを続けて行ける体勢にあると言える。一方、Microsoft IISは、今後も徐々にシェアを失っていくだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。