矢野経済研究所は2月9日、国内の FinTech市場の調査結果を発表した。今回の調査では、FinTech市場を「ソーシャルレンディング(融資)」「クラウドファンディング」「投資・運用サービス(投資・運用、情報提供)」「ペイメント・決済」「ブロックチェーン(プラットフォーム、仮想通貨)」「企業会計(クラウド型会計ソフト、会計・経理クラウドサービス)」「家計簿・経費精算アプリ(家計簿・資産管理、経費精算)」「金融機関向けセキュリティサービス」の8つの領域に分類している。

FinTech 系ベンチャー企業の国内市場規模推移予測(単位百万円)
調査結果によると、2015年度の国内FinTech市場の規模は48億8500万円。2015年度の同市場をけん引したのは、ソーシャルレンディングとクラウド型会計ソフト。
ソーシャルレンディングは、貸し手と借り手の双方が急速に増えていることが影響した。今後、借り手側では、国内外の不動産担保融資などに加えて、商品バリエーションが引き続き増えていくことが予想されるという。一方、貸し手はネット証券と連携するなど、貸し手の集客強化を進めている。
クラウド型会計ソフトは会計事務所による取扱いの増加や、地方銀行との関係構築が進んでいることに加え、銀行APIとの接続が増加したことなどが今回の結果につながった。
同研究所では、同市場は、FinTech 系ベンチャー企業売上高ベースで、2018年度に319億円、2021年度には808億円に達すると予測している。その要因として、仮想通貨の利用先の急速な拡大や、ブロックチェーンを活用した実証実験や商用事例の増加が期待されることを挙げている。さらに、ベンチャー企業同士の連携が進むほか、革新的な事業やサービスを育成するために 現行法の規制を一時的に停止して所管官庁に届け出て、相談の上、試験的に事業を進めるRegulatory Sandbox制度などの実施も期待されるという。
今後の同市場の成長については、法律的・技術的・物理的環境の整備が進展していることが大きく影響する。
法律的環境については、2016年度の銀行法の改正や改正資金決済法(仮想通貨法)の成立、電子帳簿保存法の改正などを挙げた。法環境の整備が急速に進むことで、さまざまな領域に好影響を与えているとしている。
技術的環境の整備については、現在、金融庁や全国銀行協会を中心として進められている議論をまとめた報告書について注視すべきだとした。この報告書は、2017年3月末に公表される予定で、セキュリティや消費者保護の観点から銀行API公開に際しての基準などを設けるものとみられる。そしてその内容いかんでは、FinTech企業にとっては新たなサービスの開発可能性も考えられるとしている。また、ブロックチェーンについては、Linux Foundationが進めるHyperledger Projectなどの動向が注目されるとした。
物理的な環境整備では、FinTech産業拠点がオープンし、同拠点がFinTechに関する国際的な集積地、かつ情報発信基地となりつつあるとした。
調査期間は2016年11月〜2017年1月で、国内のFinTechベンチャー企業、金融機関、SIerを対象に直接面談、電話・Eメールによるヒアリングを行い、文献調査も併用している。