Gartner Summit

既存顧客の満足度に注力せよ--ガートナーサミットで元GEヘルスケア

日川佳三

2017-02-23 08:54

 「提案型営業と言っても、顧客の結果を担保しないで売るだけであれば、結局はソリューションという名前の製品を売っているだけだ。これからは欧米のように国内でも顧客に成果を売るアウトカムセリングの時代になる」

 ガートナー ジャパンが2月21日に開催した「ガートナーカスタマー360サミット2017」のゲスト基調講演に、元GEヘルスケア・ライフサイエンスグローバル本社のチーフデジタルマーケティングエバンジェリスト・グローバルリーダーを務めた飯室淳史氏が登壇。顧客に成果を売る方法について解説した。

 冒頭では、顧客に成果を売る上で、とらえておかなければならないポイントをいくつか示した。まず、企業のほとんどは目の前に問題が見えると、これを解決することに集中してしまい、本来のゴールが見えなくなるという。

元GEヘルスケア・ライフサイエンス グローバル本社 チーフデジタルマーケティングエバンジェリスト・グローバルリーダー 飯室淳史氏
元GEヘルスケア・ライフサイエンス グローバル本社 チーフデジタルマーケティングエバンジェリスト・グローバルリーダー 飯室淳史氏

 また、企業は自らを破壊することが生き残る上で大切だという。「何もしなくても年に数十億円入ってくるビジネスがある。これを破壊する決断は難しいが、いつか誰かに取られてしまうので、自分たちで壊して市場を作り直したほうがいい」(飯室氏)。

 では、会社をどうやって変革すればいいのか。一言で言えばアジャイルになるという。失敗から学び、成果を出せる組織文化を作ることが大切になる。「経営者がしかめっ面して歩いていたら、誰も声をかけない。社員が喜んで失敗を話せるような企業文化作りが大切だ」(飯室氏)。

顧客の成果につながる活動を評価せよ

 営業部門を、顧客に成果を売るための組織にするには、営業部門の評価方法を変える必要がある。営業部門は、売上を担保しないといけない部署なので、変化を嫌い、売り上げに影響を及ぼすことはやりたくない。だから「売上目標を達成するかどうかではなく、顧客の成果につながる活動を評価する必要がある」(飯室氏)。

 飯室氏は、在籍した会社でSalesforce Chatterを導入したときに、営業部門以外はみんな使っていたのに、営業部門だけは誰も使わなかったという経験を持つ。導入から2年が経って、ようやく使い始めたという。

 営業部門がChatterを使い始めたきっかけは、営業部門のあるリーダーが「大阪大学でこんな予算が出てるけど、聞いたことない?」とつぶやいたこと。すぐに回答が寄せられた。この瞬間から営業部門の利用が増え、1日に300件投稿されるようになった。その後は営業会議のスタイルも変わり、Chatterを使うようになった。

既存顧客の満足度に注力せよ

 既存顧客に注力することも大切という。顧客には、使っている製品のリピートオーダーや、使用経験があるユーザーからのオーダーといった既存顧客のものと、口コミによって得られる新規購入の3つがある。新規顧客を増やすことに注力しがちになるが、これは誤りだと飯室氏は言う。既存顧客が新規顧客を推薦してくれるからだ。

 既存顧客に対して、まだ満たされていないニーズを見つけたら、ソリューションを作る。これに「いいね」と言ってもらえるようであれば、既存顧客が新規顧客を推薦してくれる。「勝手に新規顧客が増える。今はこれで動いている。市場がそうなっている」(飯室氏)。

 秘儀「RFP返し」を仕掛けることも大切になる。今はもはや顧客のほうが詳しい時代であり、メーカーにコンタクトを取る前に顧客側の製品調査は完了している。最初から詳細なRFP(Request For Proposal、提案依頼書)が出てくる。これに応じるだけだと、価格勝負になってしまう。

 RFPが出てきたら、顧客側の窓口となる担当者とは別に、顧客側のチェンジリーダーを見つけることが重要。チェンジリーダーに対し、相手のRFPの落ち度を指摘して、「もう一度RFPを作り直しませんか」と提案する。

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