Centre for Economics and Business Research(Cebr)が発表した新しいレポートで、ロボット分野への投資は、情報技術や建設、不動産などの分野よりも経済に対する好影響が大きいことが明らかになった。この結論は、ロボットは人間の職を奪うという一般的な認識と大きく矛盾したものだ。ロボットが人間の代わりに仕事をするようになるのは事実だが、産業用ロボットは企業に新たな成長のチャンスをもたらす存在でもある。レポートによれば、米国が持つロボット関連資本は7320億ドルで、他国を大きくリードしているという。
この調査では、ロボットによる自動化が1993~2015年にかけて経済発展に与えた影響について調べた。調査対象は、経済協力開発機構(OECD)に加盟する、経済が高度に発展しており民主的な政府を持つ23カ国だ。調査は、従来人間が行っていた作業をロボットに行わせるロボティックプロセスオートメーションソフトウェアを販売するRedwood Softwareの出資で実施されたものであり、スポンサーがロボットに対する投資を魅力的に見せたがっていることは明らかだ。ただし調査は、OECDや国際ロボット連盟(IFR)が公開しているデータソースを使用して、独立した組織によって実施された。
米ZDNetでは、この調査結果について、CebrのエコノミストDavid Whitaker氏と、Redwood Softwareのチーフ・オブ・スタッフを務めるNeil Kinson氏に話を聞いた。「過去15~20年間、産業用ロボットとその導入は、OECD諸国の経済成長に約10%寄与している可能性がある」とWhitaker氏は言う。「そして、これは控えめな推計だと考えられる」
調査では、ロボットの数が多いほど労働生産性が高く、経済発展も大きくなることが明らかになった。Whitaker氏は、産業用ロボットは商品やサービスの生産においてより容易な作業を受け持っているため、そこには人間の労働者にしかできない創造的なスキルを生かす余地が残っていると主張する。
例えば多くの自動車工場では、ロボットは力の要る作業や繰り返し作業を担っている。Kinson氏には最近、別件のプロジェクトで、英国のコベントリーにあるLand Roverの「スペシャル・ビークル・オペレーションズ」部門の工場を訪れる機会があったという。これは特注の高級車両を生産する施設で、産業用ロボットが製造を担う一方、数百人の優れた職人が、手作業でのレザーの加工や、ツートーン塗装などの仕上げ作業を行っている。こうした分業は理に適っており、ロボットがすべての人間の仕事を奪うという未来的な悪夢に比べれば恐ろしさは少ない。
Whitaker氏は次のように述べている。「ロボットは生産性に優れているが、創造的な活動は得意ではない。また、失敗に関する仕事もしないが、これはあらゆる設計プロセスの中核だ」
多くの自動車工場では、ロボットが力の要る作業や繰り返し作業を担っている。