ウインドリバーは3月24日、制御システム分野向けのIaaS基盤ソフトウェアスタックとなる「Wind River Titanium Control」を発表した。レガシーな制御システムからIoT化を見据えたシステム環境への移行に対応するものとしている。
Titanium Controlは、センサや制御系端末、ネットワーク機器といったエッジデバイスからのデータを集約する「リアルタイムサービスバス」と、KVMなどのハイパーバイザ、OpenStackベースの管理ノード、コンピューティングノード、Cephベースのストレージ、仮想スイッチ「Accelerated vSwitch」などで構成される。
Wind River Titanium Controlの構成(出典:Wind River)
産業分野やインフラ分野などの制御系システムは、これまでシステムの安定稼働が最優先され、業界に特化した専用システムが長年運用されてきた。一方でIT分野のビッグデータ分析などを通じたデータ活用が進み、制御系システムでも情報システムのようなデータ活用を通じた価値創出ニーズが高まりつつある。
Wind Riverでインダストリアル担当ソリューション ダイレクターを務めるRicky Watts氏は、電話会議を通じて「新たなニーズに対応するには制御系システムのアップグレードが必要となる。Titanium Controlは、これまでの高可用性や優れたコスト効率を踏まえたOT(オペレーションテクノロジ)とITを融合する『インダストリアルIoT』の基盤」と説明した。
同氏によれば、Titanium Controlの特徴は制御システムのデータ活用を実現するために、オープンアーキテクチャを採用しつつ、信頼性と高可用性、管理性、処理能力、拡張性、セキュリティを兼ね備える点という。
特に高可用性では、IT業界におけるIaaS基盤の稼働率が99.99%~99.999%であるのに対し、Titanium Controlでは99.9999%をうたう。コンピューティングノードも最小2ノードから100ノード以上に拡張できるとし、Accelerated vSwitchは制御系システム特有の複雑なデータのトランザクション処理に対応させるなど、同社が持つノウハウと反映させているとした。
提供先は、化学や通信、重要製造、防衛といった米国で重要インフラに指定されている16のセクターが対象になる。まずは通信および重要製造セクターの企業に注力し、通信では第5世代(5G)ワイヤレス通信システムの基盤、重要製造では例えば、航空機におけるコックピットシステムの仮想化統合を例に挙げている。
インダストリアルIoT化が焦点となる米国の16の重要インフラセクター(出典:Wind River)
Wind Riverは、2016年にLockheed MartinおよびExxonMobilと共同で、次世代のインダストリアルIoTシステムの実現を目的に協働体制を発足。ExxonMobilが、Titanium Controlを活用して主にプロセス自動化に向けた開発を進めている。
Titanium Controlの展開についてWatts氏は、「部分導入から広げつつ、将来的にクラウド環境を利用する新たなシステムの基盤となるだろう」と述べている。
ExxonMobilが進めるインダストリアルIoTシステムの構成(出典:Wind River)