日本IBMは4月24日、システム開発の高速化・高品質化を支援するツール群をクラウド型で提供する「IBM Watsonを活用した次世代超高速開発」サービスを開始した。プロジェクト管理を支援する「コグニティブPMO」と、アプリケーションの開発や保守を支援する「統合リポジトリー&ツール」の2つのサービスで構成される。
プロジェクト管理を支援する「コグニティブPMO」と、アプリケーションの開発と保守を支援する「統合リポジトリー&ツール」の2つのサービスで構成される。サービスの一部でIBM Watsonを活用する
新サービスは、支援機能の一部に「IBM Watson」を利用する点が最大の特徴。Watsonは、蓄積された知識をもとユーザーの質問に応答などができる。例えば、プロジェクト管理ノウハウを会話で指南してくれるチャットボットや、経験に照らし合わせてプロジェクトの遅れなどを指摘したり、稼働しているシステムの障害を予測したりするほか、障害発生時の対応支援などもできる。
日本IBM 専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部クラウドアプリケーションイノベーション担当の山口明夫氏
日本IBM 専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部クラウドアプリケーションイノベーション担当の山口明夫氏は、IBM Watsonをシステム開発に適用した背景には顧客の需要があったと説明する。「これまでIBM Watsonは、コールセンターや医療分野に使われてきたが、顧客から『システム開発で適用したいが、まだなのか』という問い合わせがあった」(山口氏)
参考利用価格は、コグニティブPMOが月額20~30万円から、統合リポジトリー&ツールが月額数十万円からで、いずれもクラウドサービスとして提供される。統合リポジトリー&ツールについては、オンプレミスで動作するソフトウェアでの提供も可能とのことだ。
プロジェクト管理の知見や実績をベースにWatsonで支援
コグニティブPMOは、プロジェクトに関する情報の検索、プロジェクトの品質とリスクの予測、プロジェクトに関するデータの収集/集計/レポート作成という大きく3つの機能を持つ。これにより、「プロジェクト管理コストを約30%削減できる」(同社)としている。
これら機能では、いずれもIBM Watsonを利用する。計画や管理に関するプロジェクト管理の汎用的な知識のほか、過去のプロジェクトの実績データなどを知識ベースとして使う。例えば、情報検索ではチャットボットへの質問によって、情報を取得できる。品質とリスクの予測では、過去のプロジェクトの実績や社内外の幅広い情報を活用して予測を支援する。
コグニティブPMOは、IBM Watsonを活用して情報検索や品質・リスク予測などを実現する。知識ベースとしてプロジェクト管理の汎用的な知識のほか、過去のプロジェクトの実績データなどを使う
一方の統合リポジトリー&ツールは、システムの開発/テスト工程と、稼働後の保守工程をともに支援する。このうち保守工程において、障害予測や障害対応にIBM Watsonを利用。システムの稼働実績や社内外の知見を活用して障害を予測するほか、障害発生時には障害履歴を活用して原因を特定し、ユーザーがとるべきアクションを決める。
統合リポジトリー&ツールの保守工程において、障害予測や障害対応にIBM Watsonを活用する。システムの稼働実績や社内外の知見を活用して障害を予測するほか、障害発生時には障害履歴を活用して原因を特定し、とるべきアクションを決める
保守工程の支援による効果として同社は、保守工数が30%減り、影響範囲の分析にかかる時間では80%、障害原因を特定するまでの時間ではが50%削減できるとしている。
またシステムの開発/テスト工程は、あらかじめ設計情報をリポジトリデータベースに登録しておくことによって、設計仕様の整合性のチェックや、設計データからソースコードの自動生成、テストスクリプトの自動生成などを実現する。これらの機能はルールに基付いた定型的な作業であるため、IBM Watsonは利用しない。
開発/テスト工程の支援による効果として同社は、70%のコードを自動生成でき、リリースまでの時間を50%短縮するほか、仕様間の整合性を100%維持できるようになると説明している。