コンビニ内分析で購入率をどう高めているか、ローソンのビッグデータ活用 - (page 2)

日川佳三

2017-05-16 07:00

顧客の店舗内での行動を分析して購入率を高める

 顧客の実態を可視化した事例として白石氏は、インストア分析とAIチャットボットを挙げ、さらに将来的な構想として、ICタグ(RFID)の活用についても紹介した。

 インストア分析とは、店舗内での顧客の行動を分析する。ここでは「来店したが、何も買わずに帰った」といった現象まで捉える。動線のモニタリングや属性のモニタリング、陳列棚のモニタリングなどを組み合わせる。1人の顧客が入店してから出店するまでに、1000行のログデータが生成され、映像も残す。

 こうしたデータを利用して、どうすれば購入率を上げられるのかを分析する。「店舗の前を通る客をどれだけ増やせるのか」という最初の段階から、入店率、棚前の通過率、棚への立ち寄り率、手つかみ率、購入率という指標で、それぞれのステップにおいて確率を高める施策を考える。

 ある店舗のデータを分析した結果、特定の時間帯で商品購入率が10%から26%に跳ね上がった。映像データを組み合わせてみると、その時間に商品が納品されていた。「商品数が少ない時に売れ行きが悪く、商品がたくさん置かれていると、売れ行きの良いことが分かった」(白石氏)


LINEで活躍するチャットボットサービス「AIあきこちゃん」(出典:ローソン)

 AIチャットボットは、LINE上で2016年6月に開始したチャットボットサービス「AIあきこちゃん」だ。現在は約2000万人の会員がおり、数十万人が毎日、AIあきこちゃんと会話をしている。

 チャットボットによって、「肉が好きかどうか、好きな芸能人は誰かなど、これまで知り得なかった情報を収集できる」といい、日々80万もの会話データを収集している。いずれはチャットを介して、チケット購入などもできるようにするといい、「コンシェルジュを目指す」(白石氏)とのことだ。

全商品にICタグを付与、サプライチェーン全体を効率化

 ICタグ(RFID)は、2025年までにコンビニで販売する全商品へ電子タグとして取り付ける計画があるという。衣料品業界などでは以前からICタグが使われてきたが、食材などはさまざまな理由で実現せずにいた。それが生産性を改善する狙いから、コンビニでもICタグの利用が始まろうとしている。

 従来のコンビニでは、商品にバーコードのJANコードを付与し、製品の種類ごとに管理していた。今後は製品の種類ごとではなく、個々の商品単位で電子タグを貼り付け、管理する。これにより、メーカーが製造してから流通を経て店頭で購入されるまでの流れを制御する。

 日本にあるコンビニ店舗は約5万5000店。合計で年間1000億個の商品が販売される。つまり、年間1000億個のICタグが使われることになる。タグごとに製造ロットや品質などの基本情報が埋め込まれる。

 ICタグによって、製造現場では単品単位のトレーサビリティを実現できるといい、物流現場では、棚卸し作業が効率化される。販売現場では、レジ業務が効率化される。これらによって、サプライチェーン全体では廃棄ロスの削減といった効果が期待されている。

 「ICタグの普及に向けてクリアすべき課題は多いが、こうした試みをしていかない限り、日本の生産性は上がらない」と白石氏は言う。

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