知覚のトビラ--AIが拓くICTの未来

AIが構造化する超データ社会--「情報」の正体は“パターン”

日塔史 2017年05月18日 07時00分

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「情報」は“パターン”

 前編では、ITとマーケティングを例にあらゆる分野のデジタル情報が、越境・融合し、「役職」「企業」「産業」がカオスになる状況を見てきた。

 これからAIに象徴されるテクノロジの進化によってどのようにコミュニケーションが変わるのだろうか。越境し融合した情報のカオスをどのように整理して、方針を立てて行けばよいのだろうか。今回は思い切って抽象度を高めた枠組みを提示したいと思う。

 そもそも「情報」とは一体何だろうか。定義はさまざまだが、筆者は大学院在籍時(2003年頃)にたまたま受講した西垣通教授(東京経済大学教授、当時は東京大学教授)の講義で受けた以下の定義が今になって一番しっくりきている。

 情報の定義:それによって生物がパターンをつくりだすパターン

 西垣教授は、情報とは「生命」と切りはなせないものとしている。当時は恥ずかしながら理解能力の不足からピンときていなかったが、今改めて考えると、生物としての人間自身がアウトプットとして最終的に認知できない「データ」は人間とは関係がなく、もはや「情報」とは呼べないのはある意味当然と感じられる。

 「パターンをつくりだすパターン」というのは、「オートポイエーシス(自己産出)」という閉鎖系のモデルを元にしつつ、ここでは「生命と関連するパターン」くらいに単純化して考える。

 (注4)1999年に発行された西垣通『こころの情報学』(ちくま新書)より。当時、大学院の教科書として指定されていた。カバーする範囲は情報学をベースに人工知能、VRに至り、その真価が当時に増して高まっているように思う

 反論としては「人間では解釈ができない機械情報の増大こそがビッグデータであり、例えばM2M(Machine to Machine)という概念があるではないか。AIが進化するのは機械情報を処理するからで、人間中心に考えること自体が技術進化を妨げるのでないか」というものが予想される。

 もちろんこれも一面では正しいが、機械から機械に伝わり機械が処理した最後のアウトプットが人間と全く関係のないものだった場合、もはやそれは意味があるのだろうか。

 もっとも「DIKW」モデルとして知られるように人間から遠いところから高度化するに従い「データ(Data)→情報(Information)→知識(Knowledge)→知恵(Wisdom)」とし、これらのピラミッド全体を広義の「情報」とする定義を考えることも可能かも知れない。


 言葉の意味は歴史と共に揺らぐためこれ以上の深追いはここでは避けるが、西垣教授の定義で一番明確なのは「情報=パターン」とした点である(注5)。

 なぜなら、ディープラーニングが革命的と言われるのはまさしく「パターン認識」の精度の向上であり、あらゆる情報はパターンとして認知される。

 モールス信号は短点と長点の組み合わせのパターンでコミュニケーションをとるものであり、サルの鳴き声も音の高低差や大きさ長さのパターンで仲間とやりとりする。

 山から「のろし」という視覚的なパターン変化で遠くの仲間に自分の危機を知らせることもできる。

 (注5) 「情報=パターン」を基軸とする定義は、社会学者の故・吉田民人東大名誉教授の定義をベースにしているため、吉田教授の定義とも言える。
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