ソフトウェア開発パラダイムの進化に伴い、ソフトウェアプロセスも進化した。そして、今日のコモディティ化されたソフトウェアには、アジャイルプロセスが非常に適している――メリーランド大学カレッジパーク校 コンピューターサイエンスの教授を務めるAtif Memon氏はこう話す。日本では、ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング(BTC)と共同研究しているMemon氏に、ソフトウェア開発とテストについて寄稿してもらう。今回は1回目、2回目に続く3回目。
1. ソフトウェア開発におけるプロセス指向の視点
ソフトウェア開発のプロセス(ソフトウェア製品として正式に定義されているかどうかにかかわらず)は、ソフトウェアの新規開発または機能強化の目的で実施される活動のワークフローである。
典型的に、税金申告用のシステムなど重要かつ複雑なソフトウェアに関しては、そのプロセスが正式にそして注意深く定義されており、これとは対照的に学術会議用のウェブサイトなど、一回限りの使い捨てソフトウェアに関しては、プロセスが正式に定義されていない。
なお、ソフトウェア開発プロセスに関する文献はあまりに多過ぎるため、ここでは言及しない。本稿の目的において重要な側面は、これらプロセスのほとんどで、ある意味、要件抽出、設計、モジュール分割、コーディング、デバッギングを取り巻く活動が含まれていることである。
ソフトウェア開発プロセスに欠かせないのは、共存するソフトウェアテストプロセスからなる活動である。ソフトウェアテストプロセスは、ソフトウェア開発プロセスの一部であるかもしれない。
しかし、ソフトウェアテストプロセスによって顧客が直接的に目にする成果物が生じるわけではない(通常、テストケースやテスト結果は、UI、ドキュメント、マニュアル、バイナリとは対照的に、エンドユーザーに提示されない)。したがって、説明を簡略化するために、本稿ではソフトウェア開発と共存する別のプロセスとして、ソフトウェアテストを扱う。
このような扱いは、業界内でソフトウェアテストが受けている扱い、つまりソフトウェア開発において、最上級の扱いは受けていないということと一致している。むしろ、業界ではソフトウェアのテスト活動が、他の「より重要な」活動から切り離すことができるとされてきており、短納期で、品質の対極に位置する新たな機能に関する追加要望がある場合には、テスト活動は不要とされてきた。
今日では、ソフトウェアのテストが重要な活動であるという認識が大きく深まっているにもかかわらず、テストは実装されたコードが想定された機能を果たすことを確実にする(あるいは強制的に行う) ための外部実体の役割を果たすだけである。
コップ(警察)のような役割を果たすことで、それを構成する活動はソフトウェア開発とは分離され、これらの活動をソフトウェア開発者がどのように段取りするかについては開発者にゆだねられる。開発者に委ねたことによって、「誰がシステムテスト、ユニットテスト、検収テストのテストケースを記述すべきか」 、あるいは「どのようなドキュメントが統合テストのテストケースの記述に必要であるか」、さらには「いつテストを開発すべきか」 といった疑問が浮上する。
ソフトウェア開発プロセスにおいて対となるものとして、ソフトウェアのテスト活動を極めて注意深くマッピングしなければならず、さもなければ組織はテストの恩恵を損なうリスクを負うこととなる。
例えば、ソフトウェアのインターフェースが安定する前に、UIとシステムテストが開発され、CI(継続的インテグレーション) とテストサイクルの間に使われると、多くのテストは使用不能となり、結果的にテスト維持費用が急増することとなる。
別の例として、ユニットテストがコード作成者ではなく、コードが開発者から提出された後で、専任テストチーム (開発チームではない) によって別途記述された場合、テストチームはコードロジックの理解やコードを作成した開発者との本来なら不必要なやり取りに余計な時間をかける必要が生じるので、全体的な費用は高くなる可能性がある。