スイスのVeeam Softwareは、サーバ仮想化環境のアベイラビリティ(可用性)を高めるソフトウェアを提供しているベンダーだ。中核製品は、データ保護の「Veeam Backup & Replication」と仮想環境を監視、可視化する「Veeam ONE」、さらに、これらをセットにしたスイート「Veeam Availability Suite」だ。
Veeam Backup & Replicationは、サーバ仮想化ソフトウェアの「VMware vSphere」および「Hyper-V」の上で動作する仮想サーバを保護する。仮想サーバイメージのレプリカを作成したり、仮想サーバ上で動作しているアプリケーションやデータをバックアップする。バックアップデータを使ったDR(災害時復旧)も可能で、別サイトに仮想サーバを立ち上げて業務を継続できる。
スイスのVeeam SoftwareでAsis & Japan担当Technical Directorを務めるRaymond Goh氏
ソフトウェアの狙いについて「Always-On(常時稼働)を実現する」と説明するのは、Veeam SoftwareでAsia & Japan担当Technical Directorを務めるRaymond Goh氏。アベイラビリティの高さと、ハイブリッドクラウド環境で動作するという特徴を組み合わせることによって常時稼働を実現するとしている。
同社がアベイラビリティに注力する背景には、企業が求めるアベイラビリティと、企業が実現できている数字との間に大きなギャップがある、という状況がある。同社がIT意思決定者を対象に毎年調査しているアンケートによると、ユーザーの84%はアベイラビリティの要求が満たされていない。
同社のソフトウェアを使うと、企業のすべてのアプリケーションとデータについて、15分未満のRTO(目標復旧時間)およびRPO(目標復旧地点)を達成できるとしている。15分前よりも新しいデータを、15分未満の停止時間で復旧できることを意味する。「アベイラビリティの新しい市場を開拓する」と意気込む。
エージェントレスとエージェントでマルチクラウド動作を実現
Always-Onを実現するための重要な要素が、ハイブリッドクラウド環境で動作することだ。複数の異なるタイプのサーバ仮想化環境でバックアップ/リカバリソフトウェアが動作すれば、これらのクラウドをまたがってデータをバックアップしたり、災害時にサーバを復旧したりできる。
同社のソフトウェアは、以下の4つのクラウド環境で動作する(図1)。(1)オンプレミス環境などのプライベートクラウド、(2)Veeam Softwareのものを最初から組み込んだ状態でサービス事業者が提供するマネージド型のクラウド、(3)AWS(Amazon Web Services)やAzureなどのパブリッククラウド、(4)Office365のようなSaaSクラウドだ。
図1 Veeam Softwareのソフトウェアは、複数の異なるタイプのサーバ仮想化環境(クラウド)で動作する
Veeam Backup & Replicationは、サーバ仮想化ソフトウェア(VMware vSphereおよびHyper-V)と連携して動作する。これにより、個々の仮想サーバにエージェントソフトをインストールすることなく仮想サーバのデータをバックアップできる。オンプレミスのプライベートクラウドやVeeam Softwareのソフトウェアを組み込んだクラウドサービスにおいて、こうしたエージェントレスのバックアップが可能だ。
ただし、パブリッククラウドでは、サーバ仮想化ソフトウェアと連携する手法は使えない。この問題を回避するための措置として、個々の仮想サーバにインストールして使うためのエージェントも用意した。2016年11月にLinux版のエージェントソフトウェアを出荷済みで、2017年第2四半期(4~6月)にはWindows版のエージェントソフトウェアを出荷する予定だ。
SaaSについては、Office365(Exchange Server)のメールデータをバックアップするソフトウェアを提供している。以上の3つの形態のソフトウェアによって、複数のクラウドが混在した環境でのバックアップ/リカバリを実現している。