現状では勝負にならないが日本にもチャンスがある
講演の後半で安宅氏は、AIとデータを取り巻く今後の企業勢力図とトレンドについて説明した。1つの動向に、AIのSaaS化があるという。画像認識などのように、汎用的に使える要素技術を提供する水平型のSaaSと、人事や小売や医療など業務別・産業別に特化させた垂直型のSaaSがあるという。
汎用的な要素技術を提供する水平型のSaaSは、AmazonやGoogleといった、ビッグデータも所有して先行する巨大ベンダーが勝利し、寡占状態になる。一方、業務に特化した垂直型のSaaSであれば、日本企業も十分に参入できる機会がある。しかも、垂直型のSaaSの方がビジネスとしてのボリュームは大きい。
AIとデータの世界で成功する要件として安宅氏は、データ・処理能力・人の3つを挙げる。基本的には中国と米国の戦いになるというのが、安宅氏の見方である。というのも、ビッグデータ技術のほとんどは海外から出てきており、ディープラーニングに関する論文も中国と米国くらいからしか出ていない。
エンジニアリング層の実情として、日本にいるエンジニアはSI(業務アプリケーションの受託開発)系が主であり、理工系の学生が少ないと安宅氏は指摘する。「日本には専門家がそもそもほとんどいないし、いても社会に興味がない。海外と勝負にすらなっていない。状況は164年前の黒船来航と同じ」
しかし、日本はAIやデータの分野で勝負できると安宅氏は言う。日本は第1次産業革命を経験していないが、第2次と第3次の産業革命では世界を相手に勝利した。同じように、AIとデータの第1の波にはまったく乗れていないが、第2の波や第3の波が来た時に巻き返して勝利することは可能だとした。