展望2020年のIT企業

SI事業の転換期を迎えた大手IT企業

田中克己 2017年07月24日 07時30分

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 大手IT企業のSI事業が大きな転換期にある。ユーザーが作成した要件をベースに開発する伝統的なSIから大きな収益を得るのが困難になっているからだ。下請けを安く使う手はすでに限界。そこで、富士通はデジタルジャーニーというコンセプトを打ち出し、デジタルイノベータの育成に乗り出した。ユーザーとの新たな関係作りが狙いにある。

デジタルイノベーターに賭ける富士通

 富士通のSIビジネス(国内)は、好調さを持続している。2016年度のテクノロジーソリューション事業におけるSIなどのサービス部門の売り上げは約5%の減収だが、国内は3%近い増収を達成したことからも分かる。利益の多くも、国内で稼ぎ出している。好調な理由の1つは、IT投資を控えていた大手企業が好業績を背景に、基幹などの再構築に取り組み始めたこと。

 ところが、SIを請け負うIT企業が減るなど、SE不足が深刻化している。そこに、デジタル化の波が押し寄せてきても、スキルのない企業は手を付けられない。IT企業が請け負ってくれても、高額な費用を要求される。問題解決には、ユーザー自身による内製化が最も有効な策だが、多くのIT技術者はIT企業に在籍する。人材の流動性が低く、転職する人は少ない。ユーザーにおけるIT技術者やIT担当者が優遇されないことも、転職を躊躇させる。仮に移籍しても、ユーザーの経営課題を理解し、最適な解を見つけるのは容易なことではない。どのテクノロジーを選ぶかも目利き力も問われる。

 IT企業の中には、無駄な投資や不必要な機能と分かっていても、システム開発を請け負う。開発量が多ければ多いほど、売り上げが増えるからだ。だが、企業を弱体化させるビジネスがいつまでも続けられるはずはない。強くするビジネスにしなければ、見捨てられるだろう。

 そうした中で、富士通はSIを担っている業種SEの役割を見直し始めている。ユーザーから言われたことをシステム化することから、ユーザーのゴールを一緒に実現すること。その役割を担うのがデジタルイノベーターである。AIやIoTなどデジタルテクノロジの活用を支援し、ユーザーの新しいビジネスの創出から事業化までのプロセスを統括するプロデューサ、アイデアを具現化するデベロッパ、企画を構築するデザイナーからなる。

 開発を請け負うのではなく、世の中にある革新的なITサービスの中から、ビジネスに最適なものや使えるものを選び出す。早期にビジネスを立ち上げるためだ。分かりやすい例が、米Uber Technologiesだ。Google Maps(地図)やTwilio(ソーシャルメディア通知)、SendGrid(電子メール)、Braintree(決済)などをAPIで組み合わせている。

 「その多くがスタートアップであったり、オープンソースであったりする。こうした新しいデジタル技術がどんどん出てきており、多様化している。どのサービスが使えるのか常に考えること」(徳田正之執行役員、共創サービスの発表会見)。

 デジタルイノベーターの育成を急ぐ理由は、もう1つある。SI市場の縮小による構造変革を迫られること。SIの需要はピークを過ぎており、2020年の東京オリンピック後に今の7割から6割に激減するとの見方が強まっている。富士通の宮田一雄執行役員常務は5月11日、共創サービスの記者会見で、「今のSIは2025年までSIは持つ」とし、1日も早く事業構造を変革させる決意を語った。

 目標は、2020年度にSIサービスの売り上げの1割をデジタルイノベーターらが稼ぎ出すこと。収益の柱はコンサルティングやサービスで、2017年度中に200人、2018年度に500人、2019年度に500人の業種SEをデジタルイノベーターに変身させる計画。合計1万4000人のSEのわずか1割弱だが、収益力は伝統的なSIをはるかに高いだろう。

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