日本IBMは7月27日、米国で17日に発表した最新メインフレームの「IBM Z」(z14)を初披露した。データ暗号化や機械学習、クラウド連携の3つが大きな特徴だとし、IBM Z担当ゼネラルマネージャーのRoss Mauri氏は、「進化ではなく革命的な変化を遂げた」と力説した。
IBM Zの概要は既報の通りだが、この日会見した日本IBM 執行役員サーバー・システム事業部長の朝海孝氏は、「最新のIBM Zは非常に野心的であり、メインフレームに新しい時代をもたらす」と述べた。
米IBM IBM Z担当ゼネラルマネージャーのRoss Mauri氏
日本IBM 執行役員サーバー・システム事業部長の朝海孝氏
Mauri氏の挙げる3つの特徴は、まずデータ暗号化では、以前なら大規模トランザクションなどが伴うメインフレームの運用では困難だったあらゆるユーザーデータの暗号化処理をハードウェアレベルで実現している。Mauri氏によれば、アプリケーションに変更を加えることなくメインフレーム側で高速に暗号化処理ができることで、企業などの基幹データを狙う脅威からデータを保護できる。処理能力はx86ベースのサーバに比べて18倍高く、同じ処理なら20分の1のコストで実現しているという。
機械学習については、メインフレームに格納されている膨大な基幹系データの高速かつ効率的なアナリティクスを可能にするとした。ビッグデータの機械学習は、現状ではリソースなどの点でクラウド中心に行われるが、IBMは企業にとって価値ある知見がメインフレームの中のデータにあるとみる。IBM Zでは、「IBM zHyperLink Express」という新しいI/Oインターフェースや、最大32TBの巨大なメモリ容量を生かして、メインフレーム内部で処理されているリアルなデータをそのままアナリティクスにも利用できることを目指した。
また、クラウド連携では、DevOpsモデルによるオンプレミスとクラウドサービスとのシームレスがサービスの実現に対応する。Java専用の50以上の新たな命令セットが追加されたほか、Javaのメモリ最適化処理に伴うトランザクション停止時間を最大10分の1に短縮させたという。IBM Z上にある資産をAPI化し、REST APIとしてクラウド側から利用するイメージだという。
内部が見える状態で初披露された「IBM Z」(z14)
朝海氏は、IBM Zのこうした特徴が既存ユーザーにとって、全く新しいメインフレームの利用形態になるとしている。同社では、9月までにIBM Zの購入を決めた顧客向けに、無償でデータ暗号化、機械学習、ブロックチェーンの3つの用途について無償トレーニングを提供するプログラムを開始することも発表した。
例えば、データの暗号化はシスログなどを除く、あらゆるユーザーデータに適用できる。具体的には、データセットのパターンなどで対象データを指定し、データの種類に応じたアルゴリズムを設定すれば、短時間で暗号化が行われる。暗号鍵はハードウェア内に格納され、万一の不正アクセスが検知されると自動的に消去される。暗号鍵の生成は複数の管理者権限で行う必要があり、仮に管理者の1人が不正に鍵の作成を試みようとしても不可能だとしている。
Mauri氏によれば、データの暗号化は、サイバー攻撃などによる情報漏えいインシデントが企業の重大リスクになっている現状や、EUで2018年5月に施行される一般データ保護規則(GDPR)といったコンプライアンスへの対応が背景にある。IBM Zでは、各種コンプライアンスに応じてデータの保護状況をレポートする機能も提供されている。
GDPRコンプライアンスレポートのイメージ
また、「IBM Z コンテナ・プライシング」という新たなソフトウェアライセンスモデルも導入される。アプリケーションコンテナを意識したというこのモデルでは、クラウドからオンプレミスへのアクセスやオンプレミス上の新規アプリなどの状況に応じた課金体系と、従来月額料のまま利用可能な処理能力が3倍になる開発・テスト向けの体系、金融機関向けには大量かつ少額の決済サービスでの取引額に応じて従量課金される体系が導入される。
このモデルは、企業のデジタルビジネス時代のワークロードに即したものだと、Mauri氏は説明している。以下の画像は、公開されたIBM Zの内部や3つの特徴を記したプレゼンテーション資料となる。