Amazon Web Services(AWS)は11月28日から5日間の予定で、米ラスベガスにおいて「AWS re:Invent 2016」を開催している。2日目となる29日の夜に開催したキーノートでは、AWSのバイスプレジデントで、最高(Distinguished)エンジニアのJames Hamilton氏が登壇。インフラの視点からAWSの今後の拡張の方向性を話し、AWSのクラウドを今後メインフレームシステムの移行先として展開していく考えを示した。
Hamilton氏は「Elastic is the new normal」と話し、増加するトランザクションに柔軟に対応するためにはクラウド化しか方法はないと訴求した。
AWSのクラウドを稼働させている現在14あるリージョンに、今後モントリオール、ロンドン、パリ、Ningxia(中国)を加えた18に増えることにも触れた
Hamilton氏の講演の中でゲストとして登壇したInfosysの最高技術責任者(CTO)、Navin Budhiraja氏は「Infosys Mainframe Migration Practice on AWS」を発表した。メインフレームで稼働しているシステムをAWSのサービスに移行するもので、既にMcDonald's、Dow Jones、Nordstromなどの大企業が取り組んでいるという。
Budhiraja氏は「メインフレームを30年以上も使っているという企業もある。なぜやっていないかと言えば、大変な道のりだからだ」と説明した。
3000万という膨大な数のコード数があることもあり、コード間の依存関係などの評価も難しいという。それをいかに客観的に評価しながらマイグレーションしていくかが鍵になってくる。そうした判断に人工知能(AI)を取り入れることも考えられるとBudhiraja氏は話している。
Infosysは、200を超えるメインフレーム移行プロジェクトがあることや「Mana」と呼ぶナレッジ基盤、テスト自動化などの機能により、顧客を支援していく。
メインフレームをクラウドネイティブに作り直すという選択肢も提供する
AWSはオンプレミスシステムのクラウド移行をテーマにしている。10月13日には、VMwareと提携し、AWSのクラウド上でVMwareが提唱するSoftware-Defined Data Center(SDDC)を利用できるようにする「VMWare Cloud on AWS」発表した。専用に構築したAWSのベアメタルインフラ上で動作し、「VMware vSphere」「VMware Virtual SAN」「VMware NSX」をAWSのクラウド上で利用できるようにするものだ。
既存のオンプレミスシステムを移行ニーズをめぐる競争では、IBMがSoftLayerブランドを終了させ、仮想サーバ事業とベアメタルサーバ事業を「Bluemix」に統合。Microsoftは、パブリッククラウドのAzureとオンプレミスのAzure Stackの組み合わせで実現するハイブリッドクラウドで差別化を試みている。Oracleもデータベースのユーザーを持つ強みを生かし、ハイブリッドクラウドに注力すると考えられており、ここにAWSが本格的に参入すれば、競争はさらに激化しそうだ。