クラウドサービスプロバイダー大手のAmazon Web Services(AWS)は米国時間11月28日から年次イベント「AWS re:Invent 2016」をラスベガスで開催中だ。このイベントを機会に、パフォーマンスやアジリティを考慮した価格に関する話題があちこちで取り上げられることになるだろう。
AWSは今回のイベントに先立って、さまざまなインスタンスの価格を引き下げている。このため、GoogleやMicrosoftも価格の引き下げを発表する可能性が高い。
しかし、コンピュートインスタンスの価格比較は一筋縄ではいかなくなってきている。価格の比較に際しては当然ながら、割引を考慮に入れる必要がある。エンタープライズ向けのテクノロジでは普通のことだが、通常価格と、特定条件下で適用される価格がある。MicrosoftやGoogle、AWSはいずれも、価格の割引に対してそれぞれ異なるアプローチを採用しているため、クラウドプロバイダーを価格面で比較するというのはそう簡単にはいかない。
幸いなことに、RightScaleは28日、クラウドコンピューティングの価格に関する調査結果を同社ブログで公開した。総じて言うと、コンピュート目的の選択肢として一番安価なのはAWSというわけではない。AWSの価格はたいていの場合、「Microsoft Azure」と「Google Cloud」の間になっている。
詰まるところ、AWSは1年契約と3年契約のリザーブドインスタンス(RI)で割引価格を提供しており、MicrosoftはAzureの割引価格適用条件としてエンタープライズ契約を求めており、GoogleはSustained Usage Discount (継続利用割引)という比較的分かりやすい割引を提供している。
RightScaleは以下の通りまとめている。

コンピュートインスタンスの比較にあたっては、比較対象のインスタンスが類似している点と、類似していない点に留意しておくのが重要だ。今回の分析では、比較のために6つのシナリオを用意している。つまり、汎用と大容量メモリ、高性能CPUという3つのインスタンスタイプ(vCPUの数は2つ)それぞれを、ローカルSSDを必要とする場合と、必要としない場合に分けている。すべてのシナリオは、各プロバイダーで最も安価な米国東部リージョンの価格に基づいている。シナリオを決定した後、各クラウドプロバイダーごとに適切なインスタンスタイプを決定している。すべてがまったく同じ条件での比較にはなっていない。

オンデマンドでの時間あたりの単価と、メモリ1Gバイトあたりの時間単価を各クラウドのシナリオごとに表にした。結果は、MicrosoftのEAの内容や、AWSのRIの内容によって変動する点に注意されたい。

割引後の年間価格と、メモリ1Gバイトあたりの年間価格を各クラウドのシナリオごとに表にした。結果をより明確にするために年間コスト(時間あたりではなく)を使用している。AWSのRIが最低1年間、MicrosoftのEAが3年間(毎年契約を見直すことはできる)の契約を前提にしているためだ。Google CloudのSUDの条件は1カ月の利用となっている。
総合的に見た場合、RightScaleの調査では、Googleのクラウドが多くのシナリオにおいて最も安価だという結果になった。その理由はSustained Usage Discount が自動的に適用されるためだ。他の留意点としては以下のものがある。
- アタッチストレージではなくSSDのパフォーマンスが必要となる場合、Googleのクラウドではプレミアム料金が適用される。
- Azureは、オンデマンドの料金体系全体を通じてAWSと互角かそれよりも安価となっている。
- AWSのクラウドは多くのシナリオにおいて、最も安価な選択肢とならない。AWSの提供するクラウドは、その選択肢の豊富さとサービスの先進性、顧客ベースの大きさで優位に立っているため、過度の価格競争に参加する必要はない。AWSは公正な料金体系を目指せばよいだけだ。
- Microsoftの料金体系はエンタープライズ契約の内容によって、AWSの料金体系はリザーブドインスタンスの購入内容によって変わってくる。
まとめると、クラウド購入時には自らで比較を行い、RightScaleがSlideShareで公開しているスライドをチェックし、実際に計算してみることをお勧めする。企業は最終的に、3つのクラウドプロバイダーの製品すべてを導入する必要が出てくるかもしれない(うまく連携させることができればよいのだが)。
編集部注:各表にRightScaleの記事より説明を追記しています。また、本稿にある価格や比較の情報は、RightScaleが米国時間11月28日時点で掲載した情報に基づいています。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。