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それでもクラウド化する理由--IT部門の全面的な組織改革に踏み切ったリコー - (page 2)

怒賀新也 (編集部)

2017-08-03 07:30

オラクルとの関係強化

 石野氏はクラウド導入を検討する経営トップとして「やり手」の面ものぞかせる。クラウドコストの固定費化は、実際に非常に重い課題だという。

 そこで、リコーとしてオラクルとのさまざまな意味での「取引」を結ぶことにした。前述の通り、日本での導入実績がないソフトウェアを使うというリスクを取る代わりに、リコーで発生した仕様変更の要望をオラクルに伝え、できる限り実装してもらうなどの意味を含めたフルサポート体制が1つ。

 ライセンスコスト削減の要望、価格交渉も適宜実施するという。「そうでなければ固定費としてのクラウドライセンス料負担はやはり重くなってくる。(他システムに移行する際の)スイッチングコストも高くなる」からだ。それと引き替えに、リコー側で得たノウハウやソフトウェア修正などの情報を積極的にオラクル側と共有する約束にしている。これにより、両者に利点がある関係になっている。

 「クラウド化する際の目標は、オンプレミスと比べて、導入期間は3分の1、コストは10分の1」

 リコーは、複写機ビジネスを軸にしながら、新たな事業モデル構築のため、クラウドの全面活用、それを実践するための大規模な組織変革の実施など、かなり大がかりな取り組みに着手している。

 興味深いのは「基幹系、すなわち複写機ビジネスを稼働させる中心的なシステムのクラウド化は到底考えられない」と石野氏が話していること。特に「受発注システムや契約関連のシステムなどERP部分は(オンプレミス手法で)“ガチガチ”に構築されている」ことから、クラウドとは縁遠いという。

 日本経済の屋台骨を支えている日本の大手製造業の多くにも当てはまるのではないかと、石野氏は認識している。

 メインフレーム、あるいは「Oracle Database+UNXI系サーバ機」などで構築した日本企業の典型的な基幹系システムのクラウド化は、パブリッククラウド企業が盛んにアピールするほど早くは進まないのかもしれない。「もはや、動かせないオンプレミスはなく、例外なく全てがクラウド化する」という意見と「稼働中のオンプレミスがクラウド化することなどあるわけがない」という大きく2つの意見に分かれているように見える。

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