VMwareがストレージ仮想化「vSAN(Virtual SAN)」を正式ローンチして約3年、先の決算発表で同社は成長率は前年同期比150%以上、顧客数は1万に達したことを発表した。「毎週数百の顧客を獲得してる」と最高経営責任者(CEO)、Pat Gelsinger氏は満足顔だ。
VMwareが8月31日まで米ラスベガスで開催している年次カンファレンス「VMworld 2017」で、vSAN事業を率いるYanbing Li氏(シニアバイスプレジデント、ストレージと可用性事業部兼ゼネラルマネージャー)がハイパーコンバージドインフラ(HCI)市場全体やvSANの最新動向について説明した。
Yanking Li氏。VMworldでは自ら腕に「vSAN」の簡易タトゥーを入れてvSANブームを盛り上げた。
vSANの成長は冒頭の通りだ。1年前には2000だった顧客数は1万の大台に達した。HCIトレンドが追い風となっており、保守的と言われる日本でもvSANの需要が堅調に伸びているという。
数カ月で当初の計画の2倍に拡大した日本の顧客もあるとのことだ。vSAN事業スタート当初、「vSphere上に10億ドル規模のストレージ事業を構築するという目標があった」とYanbing Li氏は明かすが、目標達成に自信をのぞかせる。
「HCIは大きな市場。IDCやGartnerは市場予測を上方修正している」とYanbing Li氏。実際インフラ業界で最も急速に伸びている分野だという。「パブリッククラウドやコンテナが注目を集めているが、実はこれらよりも高速に伸びている」とのことだ。「今、ホットなのはプライベートクラウドだ。(HCIなど)プライベートクラウド内で崩壊的な技術が生まれており、パブリッククラウドへも拡大している」(Yanbing Li氏)。
vsanready 展示会場では「vSAN Ready Node」として認定を受けた各社のサーバを集めたコーナーも
だからこそ、競争も激しい。顧客にとってのvSANの魅力は何か? Yanbing Li氏は、3つ挙げた。
1つ目はvSphereとの統合だ。「カーネルに統合されており、統一された体験を得られる」と説明する。2つ目として挙げたのは、インフラコストの削減だ。「サーバー仮想化はコスト効果が大きなメリットだった。HCIはコンピュートとストレージでそれを実現する」(Yanbing Li氏)。3つ目は「シンプルなオペレーション」だ。「コスト効果を狙って購入した顧客が、一番気に入っているのが管理体験だ」という。
3つに加えて、既存のストレージのリフレッシュが契機になっていることもうかがわせた。「ストレージのリフレッシュは長期で高価なプロセスだが、HCIではサーバーを購入するだけで簡単にキャパシティを追加できる」とYanbing Li氏、これらのメリットから「HCIこそ将来だ」と断言した。
なお、vSANは2016年秋に発表した「vSAN 6.5」でiSCSIサポートを実現、ストレージ単体の用途にも利用できるようになった。
では優先課題は何か? Yanbing Li氏が迷わず挙げたのは「顧客体験」だ。HCIは、アーリーアダプタからメインストリームにフェイズが移っていると感じており、安定した成長路線を描くためには良い顧客体験を提供する必要があると見るからだ。早期顧客は技術やビジョンを信じての導入なので、多少の困難を一緒に克服してくれた。
だがメインストリーム顧客はそうはいかない。「たくさんの顧客に会い、安心して使ってもらうために何が必要なのか、オペレーションをもっと簡単にするには何が必要なのかなどを聞いている」と言う。