デザイン思考を活用する企業が多い理由とは?
ここでオリジナル企業の選択肢には「市場から撤退し別の製品市場で勝負する」か「新しい工夫を開発し他社にはない人気商品を作り、価格競争から抜け出す」、あるいは、「製造コストの低減を図り現状のまま少しでも市場で優位に立つ」といったものが考えられるだろう。
3番目の選択は体力勝負の面が強く、あまり明るい将来は見えてこない。では、1番目、2番目の道を選んだとき、何が必要になるのかといえば、「ユーザーや市場が驚きを持って迎える新たな工夫」を提供するということだ。
もちろんこれは簡単なことではない。新たな工夫や機能は作り出せても、期待通りのユーザーの反応を得られず、価格競争力で新興企業に敗れるケースは枚挙にいとまがない。
こうした企業としての限界を打ち破る上で必要なのは、複数方向からの「開発、創造のための視点」であり、その意味で、デザイン思考はこれまでにない視点を組織内に提供してくれるものとして注目されている。デザイン思考が日本企業を含む多くのメーカー、コンサルティング企業などに導入されているのも、こうしたことが背景にある。
Rao氏は、デザイン思考はユーザーエクスペリエンスにフォーカスした発想法であり、工業製品の設計、デザインだけでなく、さまざまなサービス、建築など幅広い分野に適用できるものだと話す。
「レストランや病院では、入口に入ったときからサービスが開始されている。そこから、料理を食べたり、治療を受け、支払いを済ませて施設を出て行くまでのユーザーエクスペリエンスには、必ずユーザーが重視する要素が含まれており、そこに新たな工夫や機能を加えることで、多数の支持を得られる可能性が広がっている。似たようなことは、家庭の中にもあるだろう」