法人先行のAI活用型マルウェア検知を個人にも--トレンドマイクロ

國谷武史 (編集部)

2017-09-07 17:20

 トレンドマイクロは9月7日、個人向けセキュリティソフト「ウイルスバスター クラウド」の最新版を発表した。法人向け製品に先行導入した機械学習によるマルウェア検出技術を個人向け製品にも展開する。

 機械学習による検出は、毎日大量に出現する新種マルウェアへの対応時間を短縮させるのが目的だ。セキュリティソフトは、ベンダーが特定したマルウェアを検出する定義ファイルを用いるものの、その対応に追い付けない状況にある。大量の新種マルウェアの情報を機械学習することで一定の特徴を見出し、定義ファイルよりも早く、その特徴に合致するファイルなどを検知できるようにする。

 一方で機械学習から抽出した特徴に基づく検知は、実際には無害なファイルを問題だとしてしまう「誤検知」などが発生する確率が定義ファイルによる検知よりも高い。誤検知によって、正常なコンピュータの動作に不具合が起きるリスクも伴う。

セキュリティソフトに多数の検知技術が実装されるように、それぞれの強み、弱みを補いながらソフト全体としての防御レベルを高めている''
セキュリティソフトに多数の検知技術が実装されるように、それぞれの強み、弱みを補いながらソフト全体としての防御レベルを高めている

 このため同社では、機械学習による検知を同社の脅威分析基盤「SMART Protection Network」で行う。定義ファイルなどによる従来型の検知技術と組み合わせた多層的な検知・防御の仕組みにすることで、ローカルのコンピュータへの影響を最小限にとどめつつ、最新の脅威への対応も早めるという。

 機械学習による検出機能は、2016年11月に発売した法人向け製品の「ウイルスバスター コーポレートエディション XG」で導入し、今回の個人向け製品では一部の検出手法が異なるものの、基本的には同様だという。記者会見した取締役副社長の大三川彰彦氏によれば、この技術を英語版の法人向け製品ではほぼ実装が完了し、日本語版についても実装を進めている段階にあるという。

複数の検知技術を多層的に講じることで、どこかが突破されても別の対策で防ぐ''
複数の検知技術を多層的に講じることで、どこかが突破されても別の対策で防ぐ

 近年は、機械学習など人工知能(AI)分野の技術を利用した法人向けのセキュリティ製品が増えつつある。法人向けビジネスが主力のベンダーが、ユーザー組織での個人利用を認めているケースはあるが、個人向け商用製品での展開はあまり例が無い。同社が1月~6月に確認した新種のランサムウェアファミリーは、前年同期比で約2.1倍増の168種類に上るといい、こうした状況への対応が急がれることから、法人向けだけでなく個人向けにも機械学習型の検知機能を展開するもようだ。

 この他に最新版では、「サポート詐欺」と呼ばれる攻撃の検知とユーザーへの注意を呼び掛ける機能を追加した。また、ランサムウェアによるデータの不正な暗号化を防ぐ「フォルダシールド」機能を強化し、複数のフォルダを保護できるようにしている。AndroidやiOS向けのアプリでも同様にランサムウェアやサポート詐欺への対策機能を強化した。

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