海外コメンタリー

あらゆるものがサービスになる時代--XaaSの現状と将来予測

Charles McLellan (ZDNet UK) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-11-13 06:30

 インターネット接続が、ある程度の通信速度と少ない遅延で一般に利用可能になって間もなく、さまざまな種類のサービスプロバイダーがそうした接続を利用して、容易に利用規模を拡大できるオンデマンドサービスの提供を始めた。

 多くの専門家は、現代のクラウドコンピューティング時代は、初めてのビジネスクラスのSaaS(サービスとしてのソフトウェア)アプリケーションであるSalesforceがスタートした1999年から始まったとみなしている。しかしもちろん、それ以前にも先駆者がいた。これにはアプリケーションサービスプロバイダー(ASP)も含まれるし、それ以前にはメインフレームで時分割方式で提供されるユーティリティコンピューティングもあった。

 今では何千ものSaaSアプリケーションが存在しており、提供者もインターネット大手企業からスタートアップまでさまざまだ。またクラウドコンピューティングの残る2つの柱には、PaaS(サービスとしてのプラットフォーム)とIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)があり、これらを提供する事業者はSaaSと比べると少ない。調査会社Gartnerは、これらの基礎的なクラウドサービスの特徴を、伝統的なITの提供方法と比較して次のように分析している。


提供:Gartner

 SaaSでは、サービスの消費者がデータをコントロールするが、ITスタックのほかの要素はすべてサービスプロバイダーによって管理されている。PaaSではそれにアプリケーション層が加わり、IaaSではOS層以上のすべてを消費者がコントロール下に置く。

 従来のオンプレミス(あるいはプライベートクラウド)のITと何が違うかは明らかだ。利用者は物理サーバや仮想サーバを詰め込んだデータセンター、ネットワーク、ストレージなどの整備や維持にかかるあらゆる金銭的コストを心配する必要がなくなる。AmazonやMicrosoft、Googleなどの大手サービスプロバイダーは、一般的な企業よりも、はるかに容易にこれらの問題を解決することができる。顧客は利用料さえ支払えばいい。

 「XaaS」(X as a Service、サービスとしてのX)の基本的なメリットは一般によく知られているが、これには設備投資費から運用費へのシフト(総所有コストの削減に繋がることが多い)、あらゆる規模の企業が、規模の経済を享受できるサービスプロバイダーにメンテナンスされた最新のテクノロジを利用できること、ビジネスの要件に従って容易に規模を拡大できること、新たなアプリケーションやビジネスプロセスの実装にかかる時間の短縮、スタッフやリソースをほかのプロジェクトや優先順位の高い事業に回せることなどが含まれる。

 もちろん、XaaS導入には潜在的なデメリットもある。例えばサービスの中断、セキュリティ、ガバナンスやコンプライアンスの問題、不十分なパフォーマンス、隠れたコスト(複数のクラウドサービスの統合や管理のコストや、場合によっては大量のデータを処理することによるコストなどを含む)、サービスプロバイダーへのロックイン、顧客サポートの問題などが挙げられる。

 これらの潜在的な問題の多くは、十分な計画と厳しく定められたサービス水準契約(SLA)によって最小限に抑えることができるが、そのためには、企業は油断なく事に当たる必要がある。またパブリッククラウドが、あらゆるワークロードやビジネスプロセスに適しているとは限らないことも認識する必要がある。

SaaSからXaaSへ

Gartner

 パブリッククラウドサービスがビジネスとして好調であることは疑いの余地がない。Gartnerの最新の予想では、2017年の世界的な総売上高は2602億ドルになる見込みで、これは2016年の2196億ドルと比べて18.5%大きい。

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