今や、顧客満足度を上昇させるためにテクノロジやデータを活用していかなければ、競合他社に後れを取る時代になった。
ロンドン大学ゴールドスミスカレッジの経営学研究所でイノベーション担当ディレクターを務めるChris Brauer氏は、顧客を驚かせ、喜ばせる企業はロイヤルティを得ることができるが、それには素早い対応が必要だと述べている。
「企業文化の変革やデジタル変革は、顧客やブランドの体験の概念を新たに作り直すことを意味する」とBrauer氏は言う。「既存の企業が市場を支配できる時間はますます短くなっている」
この記事では、異なる分野のテクノロジリーダーから、デジタル時代に顧客体験を向上させるためのベストプラクティスを聞く。
1.データ主導のイノベーションを進める前に顧客の賛同を得る
英国の総合エネルギー企業EDF EnergyのBlue Labでコネクテッドホーム部門の責任者を務めているJohn Hutchins氏は、エネルギー産業の特徴は変化が激しいことであり、特にネットワークに接続されているデバイスの数が大きく増えていると述べている。同氏はBlue Labのイノベーション推進のため、データを活用したサービスを開発できないかを検討している。
Hutchins氏は最近ロンドンで開催された「DataIQ Future Conference」で講演し、Blue Labは人々が力を合わせて、プロジェクトを短期間で立ち上げることのできる協力的な場だと語った。この場がハブとなって、社内の従業員や外部組織、学術機関、スタートアップ企業などを含む、多彩な情報源の知識を吸い上げることに繋がっているという。
「ここでは漏斗からスタートして、情報を濾過し、概念実証モデルを作る」とHutchins氏は言う。「このやり方は、ラボで生まれた萌芽的なアイデアを1年以内に顧客に届けるためのものだ。われわれはいつでも新しい、優れたアイデアを探している。そして、顧客の生活をシンプルにするための取り組みの中心にはアナリティクスがある」
現在、コネクテッドホームを担当するHutchins氏のチームは、Wi-Fiで接続され、情報をクラウド経由でEDFに送信する機能がついたスマートメーターを持つ400世帯の顧客と協力して、実験を進めている。同チームは、得られた知見を顧客が視覚的に把握できるように、データを蓄えるプラットフォームとモバイルアプリを作った。同氏は、イノベーションを進めようとするIT部門の責任者にとっては、顧客の賛同が重要だと述べている。
「当社は好意的な実験参加者の協力とダミーデータによって、期待に応えられる、役に立つレベルまでアルゴリズムをトレーニングし、優れたサービスを生み出そうとしている」と同氏。「このモデルが完成したら、新たなサービスを使い始めてもらう前に、より幅広い顧客に働きかけて、能動的な賛同を得ることになる」
2.顧客が抱えている課題の解決に集中する
旅行会社Virgin Holidaysの顧客ライフサイクル責任者を務めるSaul Lopes氏は、旅行業界の企業は大きな課題に直面していると考えている。顧客を囲い込むためのロイヤルティプログラムは、費用がかかる割に見返りが小さい。これは、平均的な消費者の場合、気に入った旅行会社から旅行を購入する頻度が低く、良くても18カ月に1度程度であるためだ。