ジェイアール東日本フードビジネス(JEFB)は、コーヒーチェーン「ベックスコーヒーショップ」の業務マニュアルやレシピなどをクラウドから配信する仕組みを構築した。新メニュー開始時に行っていた集合研修を完全に廃止し、年間1000時間の労働時間削減を実現した。また、商品の見栄えに関するクレームも前年比で80%削減され、顧客満足度の向上にも寄与した。
ベックスコーヒーショップでTeachme Bizを利用するスタッフ(出典:スタディスト)
ベックスコーヒーショップでは、年間1000人ほどのアルバイトスタッフを新規採用しており、現場では人材育成が常に必要となっている。JEFBではこれまで、その育成のため紙のマニュアルを用意していたが、文字だらけで分厚いものだったという。このマニュアルは書庫に施錠して管理していたため、すぐ手に取って確認できるような利便性には欠けていた。また更新にも1〜2カ月かかるため口頭での伝達が増加し、指示が徹底されないこともあったという。
そこで、スタディストのマニュアル作成ツール「Teachme Biz」を2016年10月に導入。「飲食業界における豊富な実績」「マルチデバイス・クラウド対応」「画像・動画の利便性」といった点を評価した。2017年12月現在では85店舗、約3000人のスタッフが活用し、作成されたマニュアルは約500点に上るという。
具体的には、新メニューの展開時にレシピや業務マニュアルを共有するようにした。これまでは実際の食材を使って調理を実演する店長向け集合研修を実施した上で、店長が各店舗に持ち帰ってスタッフに伝えていたが、時間や費用がかかる上に正しく伝達できないことがあり課題となっていた。
集合研修を廃止した結果、年間1000時間(店長1人当たり16時間)を削減しただけでなく、レシピが正しく伝わるようになったため提供商品の品質が向上し、商品の見栄えに関するクレームが前年比で約80%減少したという。衛生管理などの業務マニュアルもツールで作成・共有している。
また、スーパーバイザーによる月次の店舗巡回をTeachme Bizでフィードバックするようにした。これまでは紙のフィードバックシートで文字だけで構成されていたため店長不在時には説明できず、日を改めてスーパーバイザーが再訪してフィードバックを実施するなどの課題があった。
画像や写真を使ったフィードバックが可能になり、改善箇所にマークを付けるなど店長への伝達が確実となった。他の店舗のフィードバックも閲覧できるようになったため、良い点を取り入れたり、改善要望を自店でも振り返ったり、という横展開が可能になった。移動時間中にフィードバックを作成することでスーパーバイザーの業務時間短縮にもつながっている。
Teachme Bizで作成された店舗巡回のフィードバック(出典:スタディスト)
清掃や食器洗浄などのやり方について店舗スタッフから現場の意見を収集し、本部を含む全社に改善提案する仕組みとしても活用されている。これにより業務改善のサイクルを素早く回せるようになっただけでなく、アルバイトスタッフのモチベーション向上にもつながっているという。
JEFBでは今後、同社の主要な他業態(ベッカーズ、ハニーズバー、カフェ業態など)にも水平展開し、ツール導入による品質向上、人材育成の効率化などのメリットを社内で広げ、全社的な生産性向上を目指していくとしている。